エスカレーター「片側空け」奨励する国もある 日本では「歩行は危険」と禁止の方向だが…

拡大
縮小
ロンドン地下鉄のエスカレーターは右立ち左空けが当たり前(筆者撮影)

「あんなにエスカレーターが速いとは! あの上を歩くなんて私にはムリ」
ロンドンへ個人旅行でやってきた都内在住のOLさん、地下鉄駅の様子を思い出しながらこう訴えた。「日本ではエスカレーターの上を歩きますが、とにかく怖くて右側にじっと立っていました……」。

確かにロンドン地下鉄の駅にあるエスカレーターは速い。しかも「右側立ち、左側空け」が明確に奨励されている。

日本における「エスカレーターの片側空け」は、各鉄道事業者が「手すりにつかまろうキャンペーン」を行うなど、「あまりお勧めできないこと」とされているが、実際には日本国内の多くの地域で「片側空け」の習慣が普及している。

では、「世界で最初に片側空けをやった」とされるロンドンで今どのようにエスカレーターが使われているのか、改めて観察してみることにした。

片側空けは100年前から

ロンドン地下鉄でエスカレーターが使われるようになったのは1911年のこと。ロンドン西部のアールズコート駅に最初に設置された。

エスカレーターを導入した日の様子を示す模型がロンドン交通博物館の倉庫に保管されている(普段は非公開)。それによると、左足が義足のハリスさんという技術者が杖をついて実際に乗り方を実演。ステップの右側に立ち、「右手でベルトをしっかりつかめば危なくない」と自ら乗ってみせた。

さらに当時の記録を読むと「上りエスカレーターの右側が壁」なので、「左側を空けておけば、急ぐ人がゆっくり上がって来る人の列を横切ることなくスムーズに進める」とある。また、エスカレーター導入当時のポスターからも、エスカレーター上に立つ人はみな、右手で手すりをつかんでいることが読み取れる。

次ページ左側をゆっくり歩くとあおられる
関連記事
トピックボードAD
鉄道最前線の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT