日本は今こそ「核問題」を真剣に議論すべきだ

石破茂×丹羽宇一郎対談<前編>

石破:何だかんだあっても中国は今やGDP世界第2位、国連の常任理事国。ただ、北朝鮮に言わせると、中国に言われたくない。あんたと同じことやろうとしているのに何が悪いんだと言いたいんじゃないかと。

私は北朝鮮のやり方が正しいとはまったく思いませんけれども、北朝鮮が「核を持てば、やがて偉大なる大国になれる」と思っているとして、「お前の考えていることは間違いだ」とロジカルに言えるのか、ということも問われているんだと思います。

アメリカの核の傘は本当に有効なのか

丹羽:そこでアメリカの核の傘ということですが、核の傘という考え方はいつ頃からのことなんですか。

丹羽宇一郎(にわ ういちろう)/元伊藤忠商事社長・元中国大使。1939年、愛知県生まれ。名古屋大学法学部を卒業後、伊藤忠商事に入社。1998年、社長に就任。1999年、約4000億円の不良資産を一括処理し、翌年度の決算で同社史上最高益(当時)を記録。2004年、会長に就任。内閣府経済財政諮問会議議員、内閣府地方分権改革推進委員会委員長、日本郵政取締役、国際連合世界食糧計画(WFP)協会会長などを歴任し、2010年、民間出身では初の中国大使に就任。現在、公益社団法人日本中国友好協会会長、早稲田大学特命教授、福井県立大学客員教授、伊藤忠商事名誉理事(撮影:梅谷秀司)

石破:東京オリンピックが終わって、その年の12月に佐藤栄作総理がワシントンに行って、時の大統領リンドン・ジョンソンと会談し、「中共も持ったのだから日本も核を持つ」と言っているんですね。しかしアメリカは結局、「あの日本に核を持たせてはならん」と。

そこでアメリカの核の傘を提供することと同時に、日本は核を作っちゃいけない、持っちゃいけない、持ち込ませることもしちゃいけないという「非核三原則」が導入されることになる。これが、中国が核実験をした後の一連の流れであると私は理解しております。

丹羽:日本が持つと言っているぞということに対して、当時の国際社会の反応はどうでしたか。

石破:当時はそれほど違和感を持って受け止められなかったと思いますね。

丹羽:核の傘はNATOやその他のアメリカの同盟国にもあるのですか。

石破:NATOは基本的にはアメリカの核の傘に依存していますが、フランスはこれを是とせず、シャルル・ド・ゴール大統領は「同盟とは共に戦うことはあっても、決して運命は共にしないものだ」と言って核を持つわけです。

丹羽:同盟とは傘に入ることじゃないと。

石破:はい。イギリスでは、ウィンストン・チャーチル首相がアメリカの核と原子力潜水艦の技術をそのまま導入するという決断をしています。ドイツ、イタリア、スペイン、ベルギーなどの非核保有国は、ニュークリア・シェアリングというやり方を導入し、自前の核は持たないが有事においてはアメリカの核を使う権利を持つ、ということでやっています。

というわけで、日本のように「核の傘があるから大丈夫ですよね」と信じて何もしない国はあまりないと言えるのではないでしょうか。

丹羽:いったいアメリカの核の傘というのは有効なのか。本当に傘になるのか。

石破:そうですね。核の傘というが、大きさはどれくらいか、穴が空いていたりしないか、どんなときに差し、どんなときに差さないか、ということを定期的に確認しなければ、核の傘の実効性は担保できないと思います。

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