ZOZO、「スーツ」と「PB」で挑む世界一の野望 スタートトゥデイ前澤友作社長が激白
――体型に合わせた個別生産では大量生産に比べて手間がかかります。
オーダーでも、同じ生地を使うし、同じミシン、裁断機を使う。カスタマイズされて、ワンツーワン生産に適した機械が世の中には出始めている。そういうものを掛け合わせると、大量生産していたときと何ら変わらないコストや時間で、オーダーの大量生産ができる時代になりつつある。お客様の体型を知るというインプットと、その方に合ったものを生産するというアウトプットの連携がうまく取れて、初めてビジネスになる。
たとえばデニムはサイズパターンだけで数千パターンある。デニム1本で数千パターンをやった企業はないと思う。他のブランドがやっているのはセミオーダーが多く、事前に百種類程度のサイズを用意しておいて、その人にもっとも近いものを送るという仕組みだろう。
――在庫リスクはゼロといえますか。
ゼロではない。
あらかじめ、だいたいこういう体型の人からこれくらいのオーダーが来るだろうという量は見込み発注しているが、在庫を抱えすぎずに、ある体型の方からオーダーが入ったときにすぐに生産できる体制をとっている。
なのでリードタイムとして、在庫があるものは即日、なかったとしても生産から配送までに最大2週間程度しかいただかない予定だ。オーダーメイドであるという前提なので、今日中に欲しいというお客様は少ないのではないか。少し待ってくれる余地があると思う。ゾゾスーツを配布する中で、測っていただいた方の体型データがどんどん情報で入る。どういうものを用意しておくべきかおのずと分かってくる。
当面は品番数を広げるつもりはない。大事なのは、「ぴったり合うサイズってこんなに気持ちいい、こんなにきれいに見えるんだ」と体感してもらうこと。品番をむやみに増やして、「あそこにいけば何でも揃うね」と思ってもらう必要はない。
――ゾゾタウン事業は一見順調に見えますが、商品単価の下落や値引きでの誘客も目立ちます。ネットで価格競争が過熱する状況をどうみますか。
(セールを乱発し)定価で買った人が悲しむような商売は長く続かない。今は「定価で買うと損」という風潮になってしまっている。われわれのPBブランドは店舗もなければ店員もいないので、一般のブランドがかけていたコストがかからない分、最初から低価格で提示する。今までのアパレルから考えると、常識を逸脱するくらいの(高い)原価率で売る。
――アパレルの商品価格が下がるのは必然と言うことですか。
必然ですね。今までがおかしかった。将来的には各社が(定価の設定を見直すなどして)セールをしなくなり、在庫も効率化していくだろうから、値段は全体的にどんどん下がるかもしれない。
僕らからすれば相乗効果
――PBとゾゾタウン事業とのバランスをどう取りますか。
両軸で、相乗効果で伸ばしていきたい。PBが売れれば、ゾゾスーツが広まり、ファッションは楽しいと思う人が増える。ファッションが好きな人が増えれば、ゾゾタウンが売れる。ゾゾタウンでいくら探しても自分に合うサイズがなければ、PBを買ってみようとか。あらゆる面で相乗効果が生まれると思う。
EC(ネット通販)で買うのはサイズがわからず怖いが、ゾゾスーツという採寸できるスーツが出たらしい。じゃあ着てみて買ってみよう。ぴったりのTシャツが届いた。ECってこんなに便利なんだ、というのでも良い。ECを運営する会社が自社ブランドをやるのは、カニバリゼーションだと言われるが、僕らからすると相乗効果。よりファッション好きな人を増やし、両方を伸ばしていく思いでやっている。
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