20代への「結果出せよ」は地雷を踏みかねない 若者は矛盾への鬱憤がたまっている
さて、この違いを、オッサンは辛抱強い、若者はダメと考えてはいけないと思います。というのも、オッサン達が矛盾になんとか対処することができたのは、戦後の高度成長からバブル景気までの、すべての矛盾を飲み込んでくれる市場の成長という背景があってのものだからです。「二兎を追うもの一兎も得ず」ではなく、二兎を追っているうちに市場が成長していって両方とも結局満たせてしまうようなことがあって、矛盾を解決しなくても良かったのです。
もちろん、本当の意味での「ANDの才能」「アウフヘーベン」による矛盾の解決をしてきた素晴らしいオッサン達もたくさんいたと思うのですが、実際にはほとんどの場合、矛盾を解決しないまま、厳しい二者択一としないまま、許されてきたにすぎないのではないでしょうか。むしろ、そういうオッサン達は、日本が成熟化していくに従って、今度は二者択一の厳しさにさらされているわけですが、結局それを若者に丸投げすることで、問題から逃げています。いわゆる「働き方改革」で生じているさまざまな問題などはその典型例でしょう。
これからは「トレードオフ」の時代
今でも、「ANDの思想」や「アウフヘーベン」が実現できれば、それに越したことはありません。素晴らしいことだと思います。しかし、環境は変わりました。今は、逆に、両立しがたい、矛盾する選択肢があった場合に、どちらかを捨てて、どちらかを取るという「トレードオフ」、つまり、何かを実現するために、何かを犠牲にする、捨てるという二者択一の勇気を持つことのほうが難しいこと、チャレンジしなくてはならないことに変化したのではないでしょうか。
それをうまくできているのはむしろ若者です。家庭と仕事をうまくやっていくために、飲みニケーションを捨て、伸びない給与で生活を支えるために物欲を捨て、と、オッサン達がいろいろ捨てられずどんどん追い詰められていく中、軽やかに自分の人生の目的を達成しています。上司として部下を持つオッサン達は、昔の感覚のままで「ANDの思想」だとか言っていないで、有限な若者の時間から、何をしなくてよくさせてあげるか、何を取り去ってあげることができるかを考えてあげるべきだと思います。
1995年 京都大学教育学部心理学科卒業後、株式会社リクルートに入社し人事部に配属。以後人事コンサルタント、人事部採用グループゼネラルマネジャーなどを経験。その後ライフネット生命保険株式会社、株式会社オープンハウスの人事部門責任者を経て、2011年に同社を設立。組織人事コンサルティング、採用アウトソーシング、人材紹介・ヘッドハンティング、組織開発など、採用を中核に企業全体の組織運営におけるコンサルティング業務を行っている。
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