サントリーHD、税負担が980億円軽くなる理由 計170兆円、トランプ減税で日本企業への影響

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経済産業省の「海外事業活動基本調査」によれば2015年度、日系企業は米国で93兆円を売り上げている。過去5年間、米国での売上高が大きかった企業を調べると、トヨタ自動車、ホンダ、日産自動車といった自動車メーカー、ソニーやキヤノン、日立製作所などのメーカー、コンビニのセブン&アイ・HDなどが並んだ。

こうした企業にはどんな影響が出るのか。トヨタ、キヤノンは「決算発表前なので詳細は控える」。日立は「影響は軽微」、ソニーは「全額引き当て済み」と説明。ホンダとセブン&アイは「試算中」、SUBARUは「確認中」。日産は「経営戦略に関わるので、答えられない」という。

自動車業界に詳しい中西孝樹・ナカニシ自動車産業リサーチ代表アナリストは、繰延税金負債を取り崩すことで、トヨタで2890億円、ホンダで3170億円の純利益押し上げ効果があると試算する。日系の自動車メーカーは米国にある金融子会社の規模が大きいためだ。ただ「会計上の話で、本質的には重要ではない」と指摘する。

繰延税金資産・負債の取り崩しによって損益計算書上に大きな影響があっても、あくまで会計上の問題にすぎない。しかもそれは一過性の影響だ。“稼ぐ力”であるキャッシュフローには何の影響も与えない。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の芳賀沼千里チーフストラテジストも、「株価への影響は限定的。それよりも減税による日本企業への恩恵が大きい」と分析する。

浮かれた声は聞かれない

トランプ減税は10年間で総額170兆円に及ぶとされ、その内容も広範囲にわたる。「法案が可決されたばかりで、税務・会計の実務指針が出てくるのはこれから」(PwC税理士法人の山岸哲也パートナー)。

中でも注目すべきは、法人税率の恒久的な引き下げと、「テリトリアル税制」と呼ばれるものだ。

これまで米国では、海外からの配当に高い税金を課してきたため、アップルやスターバックスなどの米国企業は、複雑な節税スキームを使い、低税率国に莫大な収益を積み上げてきた。

今回の改正では、一度だけ海外子会社の内部留保に対し課税をするが、それ以降は海外子会社から受け取る配当金への課税を廃止する。

PwCの山岸氏はその狙いを「国外に留保されている米国企業の資金を国内に戻し、使わせることにある」と説明する。

米国に戻ったおカネを投資や雇用に使わせるための手立ても至れり尽くせりだ。固定資産の即時100%償却を認めるほか、欠損金の繰り越し可能年数も従来の20年から無期限にした。

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