トランプ氏の「ロシア疑惑」大統領聴取の意味 本人は「楽しみにしている」、捜査は山場に

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大統領による司法妨害の有無を調べる際のキーマンであるセッションズ氏への聴取がおこなわれるなかで、焦点は、「トランプ大統領本人への聴取」へと移りつつあっただけに、24日のトランプ大統領の「(聴取に)喜んで応じる」という発言は、ロシア疑惑を追い続けてきた米メディアにとって、大ニュースになったのだ。

ただ、トランプ大統領が、言葉通りに聴取に応じるかどうかは、見通しづらい面もある。ムラー特別検察官側と、トランプ大統領の弁護士チームはここ数週間にわたって、大統領への聴取をどのように行うか、その条件についてせめぎ合っているといわれる。

面談によるものなのか、文書で行われるのか、どんなテーマを聞くのか、など交渉項目は多岐にわたっているとされる。トランプ大統領が協力を明言しただけに、近いうちに聴取は実現するものとみられるが、その手法や形態は予測しづらい。

深まる米国内の保守系とリベラル系の亀裂

トランプ大統領が、24日に突然記者の前に姿を現して20分近く質疑に応じたのは自らの潔白を訴える狙いとみられるが、実際の「大統領聴取」に向けてはまだまだ攻防がありそうだ。ただ、大統領聴取に応じる意向をトランプ大統領本人が明確に示し、時期まで示唆したことは、ロシア疑惑を解明するうえでは大きな進展といえる。

ただ、ロシア疑惑を巡っては、ムラー特別検察官チームやFBIの捜査の「中立性」に対する疑義が、共和党議員や米保守系メディアで、昨年末から相次いで取りざたされている。FBIの捜査官らが、トランプ大統領に批判的なテキストメッセージをやりとりしていたり、捜査幹部がクリントン氏に近い人物だとの指摘が、共和党議員や保守系メディアで繰り返しなされていたり、ロシア疑惑の捜査そのものの信頼性への攻撃が増している状態だ。

また、ムラー特別検察官のチームによる捜査と並行して行われているのは、米議会によるロシア疑惑の調査だが、今年11月にある米中間選挙も見据えながら民主党議員と共和党議員の党派的な対立はますます深まっている。トランプ大統領は24日の記者との質疑の際にも、FBIの捜査の「中立性」に対する強い不満を示した。

「大統領聴取」という、いわば本丸へとロシア疑惑の捜査が進んでいくなかで、米国内の保守系とリベラル系との間の亀裂はさらに大きくなりそうだ。

実は米国内では、このところ、こうした「ロシア疑惑」や、「移民制度改革」と「国境の壁」を巡る与野党対立の議論一色になっている。本来、米国にとって最重要課題であり、日本にとっても切迫した問題である「北朝鮮危機」についての議論は、米議員やメディアの間では低調といっていい状況だ。「ロシア疑惑」や「移民制度改革」「国境の壁」の議論に隠れ、北朝鮮問題についての十分な議論が米国で進んでいないことは、日本にとっては非常に憂慮される事態だと思う。

尾形 聡彦 朝日新聞オピニオン編集部次長兼機動特派員

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おがた としひこ / Toshihiko Ogata

1993年朝日新聞入社。秋田、千葉支局を経て、経済部記者として財務省、鉄鋼業界、証券業界、流通業界などを担当。2000~2001年に米スタンフォード大学客員研究員。2002~2005年に米サンノゼ特派員としてシリコンバレーを取材した。2008~2009年にロンドン特派員として欧州経済、2009~2012年はワシントン特派員としてホワイトハウスや米財務省、米連邦準備制度理事会(FRB)を取材。日本の財務省・政策キャップ、経済部次長、国際報道部次長を経て、2015年から機動特派員として、米ホワイトハウスや日本政府を取材している。2016年からはオピニオン編集部次長を兼務する。7月下旬に、2つの米政権や大統領弾劾の行方を描いた『乱流のホワイトハウス トランプvs.オバマ』(岩波書店)を刊行した。ツイッターは@ToshihikoOgata

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