「政府閉鎖」寸前を繰り返す米国のヤバい状態 鳥獣が跋扈する米国の財政リスクを見失うな
何より、税金の使い道を決めるのは、議会の最も基本的な仕事である。まともに予算すら決められない状況は、政治への信頼を低下させずにはおくまい。こうした状況の定着は、トランプ大統領のような異端の政治家を求める機運を醸成した一因といっていいだろう。
象とロバが仲直りできたとしても、米国の財政にはもうひとつのリスクがある。「タカ」の交代が招く、財政赤字の拡大である。
存在感高まる「国防タカ派」
米国では、健全財政を重視する「財政タカ派」が劣勢にある。本来は共和党に多い種族だったが、その共和党は10年間で1兆5000億ドルの財政赤字拡大となる税制改革を実現させたばかりである。一方の民主党は、もともと大きな政府を好む政党であり、財政タカ派が生息しやすい環境ではない。
代わって存在感が高まってきたのが、軍事力の強化を唱える「国防タカ派」である。これも共和党に多い種族だが、北朝鮮などの地政学リスクの高まりもあり、国防費の増加を声高に要求するようになってきた。今回の予算協議でも、国防費の引き上げが隠れた論点になっている。
象とロバの仲直りは、財政赤字の拡大につながる可能性が高い。共和党が国防費の増加を求める一方で、民主党は教育関連など、国防費以外の歳出を増やすよう求めている。加えて、昨年米国を襲ったハリケーンの復興費用についても、さらなる上積みが模索されている。2018年度に限れば、模索されている歳出上限の引き上げ幅は、税制改革による同年度の減税額よりも大きい。
気をつけなければいけないのは、米国の債務残高が高水準にあることだ。金融危機当時にGDP(国内総生産)比で10%程度まで膨らんだ財政赤字は、足元では同3%台にまで低下している。しかし、金融危機前にはGDP比で30%台だった債務残高は、同80%近くにまで積み上がったままである。
財政事情の悪化は、米国経済の時限爆弾である。債務残高の上昇は、金利上昇の引き金になりかねない。それでなくても、財政事情が悪化すれば、次の景気後退がやってきたときに、財政出動で対応する余地は小さくなる。
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