南北合同チーム結成に見る文大統領の身勝手

平昌オリンピックで度を越した政治利用

そこで平昌五輪開催を前に韓国政府が目指したのが開催国チームの出場権獲得だった。アイスホッケーの場合、世界のトップクラスまで行かなくとも、ある程度の力があれば開催国チームに出場権が与えられる。それを目指して韓国は4年計画で男女チームの強化を進めてきた。とはいえ韓国の競技人口は少なく自前で強いチームを作ることは困難なため、実力ある外国人選手の帰化を積極的に進めた。その結果、男女とも国際大会での成績が上昇し、開催国出場権を獲得したのだ。

そのような事情のため、五輪に出場する韓国選手をみると韓国チームは男子7人、女子4人の選手がカナダや米国から帰化した選手となっている。男子の場合は3分の1が帰化した選手で占められる。

ここまで苦労して手に入れた五輪出場権だが、開催直前になって文在寅(ムン・ジェイン)大統領が女子チームは南北合同とすると決めてしまった。関係者に対しては事前に何の相談もなかったようで、女子チームのメンバーは「米国での合宿を終えて1月中旬に帰国、仁川国際空港に到着した時に初めて聞かされた。選手は深く傷ついており、士気も下がっている」と韓国メディアに語っている。

上位入賞できないので政治的に利用しやすい

それはそうだろう。アイスホッケーのトップ選手の多くは幼少期からスケートを履き、一般人の靴と同じようにスケートを操る。大半の選手が10年以上、トレーニングを続け念願の五輪出場を果たした。韓国の実力から考えると、選手にとっては最初で最後の五輪出場となるだろう。ところが北朝鮮の選手の参加で一部の選手ははじき出される可能性が高まった。かわいそうな話であるが、それだけでは済まない。文在寅大統領の決断やIOCの判断は矛盾と問題に満ちているのだ。

まず、南北合同チームはなぜ女子だけなのか。アイスホッケー関係者の間では、「韓国の男子チームは7人もの帰化した選手を加えるなど強化に力を入れてきた。本番で勝利する可能性も出てきている。それに対し女子チームは、上位進出はもとより1勝することも難しいとみられている。だから、女子チームだけ合同としたのであろう」というのだ。実際、李洛淵(イ・ナギョン)首相が記者との懇談会で「女子アイスホッケーは韓国が世界ランキング22位、北朝鮮が25位でメダル圏にない」などと発言しため批判を浴び、後日謝罪している。

南北の連携や融和を示すには個人競技ではなく、両国の選手が一緒になってプレーする団体競技のほうが効果的だ。しかし、上位入賞が期待される競技での合同チームは国内の反発を買いかねない。そんな中では女子アイスホッケーが一番やりやすい。韓国政府はそんなことを考えたのだろう。これでは関係者はたまったものではない。

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