地獄を見た私が生活保護状態から脱せた理由 実家で親に頼るとかえって追い込まれる
雨宮:私の周りで1990年代後半から2000年代に亡くなった人の中には、小林さんのようにブラックな会社で働いたり、フリーターで働いたりしていたけど、生活ができなくなって実家に帰って、そこで親との関係がめちゃくちゃにこじれて家庭内暴力にまで発展してしまい、自殺するケースがありました。
実家が安心できる環境ならばいいですが、実家にいることによって「うつ」が悪化したりする場合も多いです。だから、「実家にいると病気が悪化するから」と主治医に診断書を書いてもらい、生活保護を受けて実家を脱出し、そこから働いて自立した人もいます。そういう時、生活保護は使える手だと思います。でもそこに、小林さんのようにクリニックが介入するとまた面倒くさくなるのかなと、今回著書を読んで改めて気づきました。
小林:私の場合、実家がすごく田舎だったので、周囲で仕事を見つけるのも難しい状態だったのもありました。生活保護を受けて家を出られたのはすごく良かったと思います。環境を変えて、もう少し都心に住んだら仕事も見つけやすかったです。うちの親は厳しい親ではないので「働け」とか「家を出て行け」とかは言わないのですが、母親との共依存関係はありました。「あなたは病気だから、働かずにずっと家にいてもいいのよ」という感じになってしまって。
母はそれでいいと思っているけど、私自身はこんな自分がすごく嫌で、どうにかしたいけど、どうすればいいのか、何をすればいいのかもわからないという状態でした。だから、ひとり暮らしをして生活保護を受け、母親と物理的に距離を置いたのがとても良かったです。母親といることによって本人の生活力が奪われていってしまうんですよね。ゴミ出しの仕方もわからないし、料理も親が作るし。
雨宮:ずっとその調子で40代まできている方もいますよね。
小林:そしてそのまま親の介護に突入というパターンもありますよね。
偏見があるため精神障害を隠さないといけない
――当時、精神障害は現在よりも偏見が強かったのではないでしょうか。
小林:そうですね。本の中でも触れたのですが、当時、小学校に精神障害の男が乱入してたくさんの児童を刺殺した池田小事件がありました。マスコミの論調も「精神障害者を排除しよう」といった感じでいたたまれなかったです。
特にこの手の病気だと、親も私の周囲に病気のことを言わないように隠したりします。仕事をする際も、病気のことを伝えるべきか伝えないべきか、という悩みもありました。まず、精神障害を隠すという、スティグマの問題がすごくあります。そこがつらかったです。
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