現代の悲劇「アルビノ狩り」を知っていますか 異色作家が小説の中で伝えたかったこと

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

筆者はテレビ局で報道の記者や情報番組のプロデューサーなどをしていた20年のうち、3分の1を海外にかかわる部署で過ごしたが、恥ずかしながらアフリカでアルビノが置かれている現状について知らなかった。

だからこそ、このアルビノ狩りをテーマにサスペンスやミステリーを書いてやろうと思ったのがこの小説『呪術』の原点だ。

親類に襲われるケースも

読者にあまりなじみがないアフリカという土地、そして主要な登場人物に呪術師を選んだ時点で小説の骨格は決まった。そして、テレビで見たアルビノ狩りに遭い、片手を失った女性の姿が頭に強く印象に残っていた筆者はアルビノの少女を登場人物の柱に据えようと決めた。

『呪術』の序盤では日本人とタンザニア人の両親を持つ、12歳のケイコがアルビノ狩りに遭う。

叔父以外の三人はみな手にライフル銃か鉈を持っている。銃を持つ男が一人、残りの二人は鉈を片手につかんでいた。刃がギラリと光った。
(『呪術』第一章より)

彼女を襲ったのは見ず知らずの人間ではなく、父方の叔父だった。実際、アフリカでは親類に襲われるケースもあるという。ケイコは主人公であるツアーコンダクターの女性、麻衣と共に日本に逃げるのだが、なぜか日本でもその身体を狙われてしまうことになる――それが『呪術』のストーリーだ。

『呪術』では世界的に有名なモデルの中国人女性が登場するが、その外見のユニークさを生かしてモデルとして活躍する例は実は欧米などでは珍しくないが、日本ではあまりそうした例は知られていない。

アルビノのエンターテイナー、粕谷幸司さん(撮影:Harumasa Togashi)

だが、小説の執筆を進めるうち、日本でもアーティストやモデル活動をしている人たちがいることを知った。エンターテイナーとして歌手をしている粕谷幸司氏や、モデルのCHIHIROさん達がその例だ。

2人と話して共通していたのは、アルビノだから何かができないと感じたことはないとはっきり言い切る点だ。

アルビノは視覚障害を伴うことが多く、紫外線にも弱いというハンディがある。だが、粕谷さんは「建物の影がどこにでもありますし、特に不便はないです」ときっぱりと言う。

次ページ2人から聞いた情報を盛り込んだ
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事