安倍政権は、財政推計の「粉飾」を始めるのか 茂木大臣が金利の前提を修正すると発言

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ただ、こうした安倍政権の姿勢には強い批判も集まりそうだ。国の将来を左右する財政見通しにおいては、時の政権のバイアスのない試算が求められる。安倍政権は、アベノミクス成功のストーリーに沿ってGDPと税収の拡大という”おいしい”ところだけを織り込み、それに付随するはずの長期金利の上昇というデメリットは意図的に消そうとしている、と受け止めかねられない。

アベノミクスとともに始まった日銀の異次元金融緩和は、政府の財政赤字の穴埋めのために中央銀行が資金供給(国債購入)する「財政ファイナンス」ではないかと当初から指摘されてきた。今回、安倍政権が財政試算で長期金利想定を修正するのであれば、政府自らがそれを認めたとも認識されるだろう。

日銀はがんじがらめの状況に

異次元緩和開始から5年になろうとしている日銀だが、依然として2%の物価上昇率目標の達成には遠く、今年以降もレジームチェンジはないとの見方が大半だ。

墓穴を掘ったのは日銀自身だが…(写真:civi/PIXTA)

開始当初は、「政府は財政健全化にしっかり取り組み、経済が回復すれば物価も上昇し、金融緩和はきちんと出口政策に向かうから心配にはおよばない」(日銀幹部)と豪語していた。しかし、いま起きているのは、政府が財政の悪化を糊塗するために異次元緩和の長期継続を前提にしようとする動きだ。

日銀はもはや自分の考えでは金利を上げられない、がんじがらめの状況に陥りつつあるのではないか。墓穴を掘ったのは日銀自身だが、その結果、日本経済に将来の悪性インフレの危険を背負わせたことになる。

野村 明弘 東洋経済 解説部コラムニスト

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のむら あきひろ / Akihiro Nomura

編集局解説部長。日本経済や財政・年金・社会保障、金融政策を中心に担当。業界担当記者としては、通信・ITや自動車、金融などの担当を歴任。経済学や道徳哲学の勉強が好きで、イギリスのケンブリッジ経済学派を中心に古典を読みあさってきた。『週刊東洋経済』編集部時代には「行動経済学」「不確実性の経済学」「ピケティ完全理解」などの特集を執筆した。

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