一流のトレーダーと漫画家に共通すること 特別対談 松本大×三田紀房(その2)
(構成:鈴木雅光、撮影:今井康一)
トレーダーも漫画家も、「結果がすべて」という厳しい世界。そのプレッシャーに耐え、かつ仕事を楽しむために必要なものとは何なのか。あるいは仕事を成功に結び付けるために必要なこととは何なのか。今回もトレーダー×漫画家の刺激的な対談が続く。
年上の新人にびっくり
三田:前回、松本さんは「マネックス証券を辞めたら一トレーダーになりたい」とおっしゃいました。それだけ人を魅了する何かが、マーケットにはあるということですよね。何があるのでしょうか。
松本:好奇心を満たしてくれるからでしょうか。マーケットでポジションを取るときというのは、自分のアイデアを試しに行くわけですよ。うまくいくこともあれば、まったくダメなこともある。うまく行かないと「今度こそ!」と思う。で、再び自分のアイデアを練って、それを試すため、マーケットの森に入っていく。その繰り返しですね。
マーケットという場所は、自分の好奇心や探究心を満たしてくれるところなのです。だから、こうして今もマーケットをウォッチし続けているわけです。
三田:松本さんの周りにいた方も、そういう人たちですか?
松本:面白いことがありますよ。ソロモン・ブラザーズに入って2年目の頃、新人が入社してきたんです。それも結構、年上の。まあ、外資系金融機関だし、年功序列なんて関係のない世界でしたから、年上の新人はありだとは思っていたのですが、その本人の顔をよ~く見てビックリ。
三田:お知り合いの方だったのですか。
松本:知り合いも何も。僕が中学2年生のときの数学の教師だったのです。
三田:それは、確かに驚きますよね。
松本:彼に聞いたら、「どうしても試してみたくなった」って。つまり、数学の先生ですから、いろいろ数字や理論をいじっていたのでしょう。やはり非常に優秀な数学の先生でしたから、あるとき、彼の数学を投資に応用してみたくなったのではないでしょうか? で、それを試すために外資系金融機関の門をくぐった。
三田:日本ではなく、外資系の金融機関を選んだというのも正しい判断ですよね。これが日本の金融機関だったら、おそらくまったく本人の意図しないセクションに回されるおそれがありますからね。
松本:でも、本当にすごい人たちが大勢いたんですよ。たとえば数学のノーベル賞と言われるフィールズ賞というのがあるのですが、それをいつ受賞してもおかしくないという、まさに数学の天才が、ぞろぞろいましたね。