一流のトレーダーと漫画家に共通すること 特別対談 松本大×三田紀房(その2)
漫画家は半分くらいが「運」
松本:三田さんは「インベスターZ」だけでなく、「ドラゴン桜」や「クロカン」「エンジェルバンク」といったヒット作を描かれていますが、やはり下積み時代の苦労もあったのですか。
三田:僕は、実はアシスタント経験がないまま漫画家になったのですよ。もちろん、そこまで順調に行ったわけではなく、失敗も繰り返しています。最初の就職先は百貨店で、ここは2年で辞めましたし、その後、実家に戻って商店経営を引き継いだのですが、これも地元の商店街が不景気で、結局、店を畳まざるをえませんでした。
で、手っ取り早くお金を稼ぐ方法はないものかと考えていたとき、漫画雑誌の新人賞を取れば100万円が賞金として出ることを知ったのです。
松本:でも、新人賞ってそんなに簡単に取れるものではないですよね。
三田:やり方次第だと思うんですよ。先ほど、松本さんが情報収集などの準備をしっかりしてからトレーディングに臨むという話をされていましたが、新人賞を取る場合も、それと同じです。漫画の新人賞って、ほとんどの漫画雑誌で募集していますから、応募先はいくらでもあります。
ただ、選ばれなければ意味がありませんから、情報収集をするのです。僕の場合、新人賞に選ばれた作品がどういう傾向のものなのかということを、雑誌ごとに調べました。結構、雑誌によって一定の傾向が見られるのです。それを把握したら、後はその傾向に合わせた作品を描くこと。そうすれば、新人賞を取る確率がぐんと上がります。事前に下調べをしっかり行う。この点もトレーディングに似たところがありますね。
松本:漫画家の世界も競争が激しいと思うのですが、続けていくのも大変ではありませんか。
三田:本当に何でもやりましたよ。とにかく、編集部からこれを描いてくれと言われたら、すぐにそれを描く。そうしているうちに、「三田はどんなテーマでも描ける」という評価が定着していく。そうすれば、少しずつではありますが、着実に仕事は増えていきます。あとは「運」ですね。漫画家の場合、続けていけるかどうかという点において、運の要素が非常に大きいと思います。おそらく、半分くらいは運ではないでしょうか。
松本:運ですか。そこはかなり興味深い、面白い話ですね。というのも、トレーダーも運に左右される部分が結構ありますし。
三田:では、次回は「運」について少し詳しく話してみましょう。
※ 続きは10月4日(金)に掲載します
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