一流のトレーダーと漫画家に共通すること 特別対談 松本大×三田紀房(その2)
成功するトレーダーの共通点
三田:みな、自分が考えたアイデアを、現実のマーケットで試したいという気持ちで入ってきたんですか。
松本:全員が全員というわけではないと思うのですが、そういう人が多かったと思います。
たとえばオプション取引の妥当値を算出するのに用いられる方程式に、「ブラック・ショールズ・モデル」というのがあるのですが、これを考えた人のひとり、フッシャー・ブラック氏は、自分のアイデアを試す目的で、ゴールドマン・サックスで働いていた時期がありました。彼は惜しくも50代で亡くなったのですが、もし生きていたら、ノーベル経済学賞を受賞していたでしょう。実際、1997年のノーベル経済学賞は、ブラック・ショールズ・モデルを共同で開発したマイロン・ショールズが受賞しています。ほかにも面白い人はたくさんいましたね。
三田:とても興味があります。
松本:まだ私がルーキーだった頃、ソロモン・ブラザーズの債券部門を率いていたジョン・メリウェザー以下、17名のチーム全員で、カジノに行ったことがありました。目的は何とカジノ潰し。スロット、バカラ、ブラックジャック、ルーレットなど、いろいろあるゲームの中からひとつを選び、われわれが持ちガネを全部するか、もしくはカジノ側に降参させるか、という勝負をしたことがあります。
三田:結果は?
松本:われわれの勝ちです。始めてたったの30分間で勝敗が決しました。
三田:そのような多士済々の人たちがいる中で、トレーダーとして成功していくためには、何が必要なのでしょうか。
松本:謙虚であることでしょう。謙虚じゃない人は、自分が負けると「自分は正しい。マーケットが間違っているんだ」などと強弁しようとします。
でも、マーケットはつねに正しいんです。損をしているというのは、自分が間違っているだけのことで、そこを認められない人は、まず成長しません。そもそもつねに自分が正しいと思っているような人は、努力もしませんしね。
ひとつのトレーディングが失敗に終わったとしても、何が失敗だったのかということを研究し、それを生かして次のアイデアを練ることができる人でないと、マーケットに勝つことはできないのです。