マツダCX-8が若い世代に大ウケしている理由 日本の3列シートSUV市場を活性化できるか

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マツダからの乗り換えは、すでに生産を終了したミニバン「MPV」からが圧倒的に多い。もともとラグジュアリーな部分に力を入れ、走りにもこだわった車でもあり、多人数でかっこいい車、というコンセプトはCX-8と似たところもあった。最後に発売された2006年から11年が経ち、子どもが成長してスライドドアが不要になり、収入もMPV購入時より増えて価格的にも手が届くようになった、というタイミングで買い替えを決めるそうだ。

マツダのCX-8の内装。本物の木材を使用するなどして、質感にこだわった。接待や法人利用にもふさわしい高級感ある内装に仕上がっている(撮影:尾形文繁)

もちろん、CX-5やセダンの旗艦車種「アテンザ」など新世代商品群からの乗り換えも多い。初代CX-5のユーザーの中には、今年2月に発売された2代目に乗り換えず、CX-8の発売を待っていた人も多いという。そうした人の購入ポイントとなったのは、3列シートもさることながら、CX-5より36センチ長くなった全長を活かした荷室の広さや「プレミアムSUV」とも呼べる高級感だ。

CX-5ではゴルフバッグを4つ乗せるのは難しいが、CX-8なら余裕を持って載せられると、荷物を沢山載せることが多い顧客から歓迎されるそうだ。高級感が求められる接待や法人向けにもCX-8はニーズがあるという。トヨタの高級ミニバン「アルファード」「ヴェルファイア」や、価格帯は異なるがBMW「X5」やボルボ「XC90」など輸入車の3列シートSUVのような使われ方も期待できる。

3列シートSUVは道路の広い米国市場では主流で、マツダではCX-8よりもさらに大きな「CX-9」の販売が好調だ。日系メーカーではトヨタが「ハイランダー」、日産が「パスファインダー」などを発売しており、スバルも「アセント」を2018年に投入する。

国内の3列シートSUV市場は発展途上

マツダが北米で販売する3列シートSUV「CX-9」は好調だ。日本でも3列SシートSUV市場が拡大するか、CX-8の販売動向に注目が集まる(写真:マツダ)

しかし、3列シートSUVは国内では需要がまだ少なく、2016年の販売台数がわずか3万8000台だ。車種もトヨタの「ランドクルーザープラド」や日産「エクストレイル」などに限られ、71万1000台のミニバンに、19倍もの差をつけられている。

とはいえ、昨今のSUVブームで、ミニバンからSUVへの移行は着実に進む。CX-8だけでは台数を引っ張れないが、2018年以降はホンダが「CR-V」をハイブリッド車(HV)で国内に再投入するなど、日系他社も活発に動き、「3列シートSUVの市場が盛り上がることが期待できる」(マツダ広報)という。

マツダが新しいディーゼルエンジン「SKYACTIV-D」でディーゼル需要を盛り立てたときのように、3列シートSUVというジャンルでも、新たなトレンドを作り出せるか。ボーナス商戦や初売りが終わった後もその勢いを持続できるかどうかに、真の実力が表れそうだ。

森川 郁子 東洋経済 記者

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もりかわ いくこ / Ikuko Morikawa

自動車・部品メーカー担当。慶応義塾大学法学部在学中、メキシコ国立自治大学に留学。2017年、東洋経済新報社入社。趣味はドライブと都内の芝生探し、休日は鈍行列車の旅に出ている。

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