落日の「経団連」、新会長就任でも厳しい前途 日立製作所・中西会長が次期候補有力だが…
そのためか自民党からも経団連批判が飛び出す始末である。将来の総理候補の1人、自民党の小泉進次郎・筆頭副幹事長は中西氏の次期経団連会長内定報道が流れた11月中旬、若手経営者らに向けた講演で手厳しく批判した。
「政界は『安倍一強』といわれるが一番モノを言えないのは経済界。『おカネが足りない』と言われたらおカネを出す。政治の顔色をうかがう現状に甘んじていてはイノベーションは生まれない」
安倍首相は秋の解散総選挙前、消費税率を8%から10%に引き上げる際にその使途を変更し、待機児童対策などに年2兆円を振り向けると表明した。消費税から振り向けるのは1兆7000億円で、安倍官邸は残り3000億円の負担を経済界に求めた。榊原会長はあっさり安倍首相の要望を受け入れた。これを小泉氏は批判したのだ。
ある経団連副会長はこう漏らす。「私たちにも明確な説明はなかった。どのように決まっていったのかわからない」。企業収益が回復している大企業が負担するのはいいとしても、中小企業までも負担するには丁寧な経済界内の調整が必要だった。
「経団連の意見が経済界のすべてではない」
そのため、加盟企業のほとんどが中小企業の日本商工会議所の三村明夫会頭は12月5日の記者会見で、「われわれはまだ意見を聞かれていない。経団連の意見が経済界のすべてではない」と言い放った。
政府が榊原氏に打診し、了承されれば「経済界も容認」と既成事実にしてしまうのも乱暴だが、榊原氏も経済界として受け入れるという際には経済界を納得させられるだけの理屈と手続きが必要なのに、安倍官邸に言われるがままである。これでは財界総理としての重みはなくなってしまう。
経団連会長が存在感を発揮したのは奥田碩・トヨタ自動車会長(当時)が最後といえる。首相は小泉純一郎氏で奥田氏とも相性が良かった。小泉氏の靖国参拝にも経済界として釘をさしたり、日中の関係修復に奥田氏が動いたりしたこともあった。
その後は第1次安倍政権以降、自民党が弱体化し、民主党政権となる。御手洗冨士夫・キヤノン会長が経団連会長時代には与党とがっちり手を結べなくなった。民主党政権ではなおさらだった。
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