落日の「経団連」、新会長就任でも厳しい前途

日立製作所・中西会長が次期候補有力だが…

2012年に返り咲いた安倍政権と対峙したのは米倉経団連。米倉氏は異次元の金融緩和を柱にしたアベノミクスを「無鉄砲」と批判したことで、安倍首相との関係は冷たくなった。

安倍官邸との関係修復を図るため、榊原氏が経団連会長になってからは安倍首相へのすり寄りが目立つようになった。政界と経済界との緊張関係はなくなり、財界の重みは軽くなるばかりだ。

さて中西氏が大方の予想どおり経団連会長に就任すれば、財界総理の地位は変化するだろうか。東レ相談役でもある榊原氏は東レ社内の求心力も低下しているが、中西氏は日立会長としてグループに影響力を持つ。また日立は鉄道事業や原発などのインフラ輸出に力を入れており、今後の日本経済の成長戦略を担う立場にもある。榊原経団連時代よりも政治や経済界への影響力は増すとみるのが順当であろう。

しかし、経団連の復権は容易ではない。そもそも経団連幹部の人材難が続いている。米倉氏、榊原氏が会長に就任したのは10数人もいた副会長の中から適任者がいなかったから。今回も中西氏以外に有力候補者は見当たらない。たとえばトヨタから社長の豊田章男氏が副会長に入っていたら事態は変わっただろうが、自動車業界は「100年に一度の大変革の時」(豊田氏)を迎え、財界活動どころではない。

今後の経団連の存在感

また、ネット企業などの台頭により、大企業が中心の経団連の存在感は今後ますます低下するだろう。奥田経団連時代、経団連に加入した楽天など新興勢力は旧態依然とした経団連の体質に嫌気がさし、新しい経済団体を作った。ソフトバンクの孫正義氏はいまだ加盟はしているが、原発を推進する経団連路線を批判し、ほとんど活動らしい活動はしていない。

日本経済にイノベーションを起こしそうな企業群は総じて経団連に冷ややかだ。かつての高度経済成長の頃のように経団連加盟企業が日本経済を下支えしていた時代にもはや後戻りはしないだろう。経済界代表として経団連が窓口となり、政府から「3000億円の経済界負担」を請け負うことなどの正当性は薄れていく。

もう1つ、中西氏が経団連会長になったときに厄介なのが安倍政権との間合いの取り方である。安倍首相とJR東海の葛西敬之名誉会長とのパイプは太い。葛西氏に連なる財界人脈は古森重隆・富士フイルムホールディングス会長ら経済界ではやや政治的に右派系の流れにある。中西氏もその流れの経済人と交流を持つ。経団連にとって日本の最大の貿易相手国である中国との関係改善は重要なテーマだ。にもかかわらず、中西氏が右派系人脈に軸足を置けば、経済界内部や対中関係に不協和音が起きかねない。

「私は首相にも言うべきことは言いますよ」。中西氏は財界幹部にこう話したという。だが経団連会長就任を機に葛西氏らのグループと一線を画せるのかどうか。そもそも安倍首相が3選を果たし、2021年まで首相を務めることになるのかどうか。政治は、一寸先は闇である。安倍政権の支持率低下が伝えられ始めた。安倍政権との蜜月を引き続き図ろうとする経団連の道行きは明るい、と言い切れまい。

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