税の申告漏れが年7兆円超に及ぶ日本の現実

きちんと納税されれば消費増税よりも集まる

高額重点主義による実地調査率は、1980年代初め頃は10%前後だった。調査率が1割程度ということは、一度調査を受けた法人の次の調査は、ほぼ10年後という頻度(10年に一度)になる。最近のように3%前後だと30年に一度であり、今年調査を受けると次の調査は30年後くらいになる。

実地調査では過去3年分程度の申告状況が調査されるが、30年に一度くらいの頻度だと、調査がほとんど追いつかない。まして高額重点主義だと、中小企業の多くは手つかずだろう。国税庁(税務署)の調査能力の低下が止まらないから、そこにつけ込んで不正申告が減らないという面は確かにあるはずだ。

シャウプ勧告も税務職員の増加を奨励

先にも触れたように、「税務調査の透明化」などを目的とする改正国税通則法が2013年に施行され、国税庁の責任は大きくなっている。だが、国税庁の活動を支える仕組みは貧弱である。

たとえば税務に関連する訴訟では、米国や英国では納税者側が立証責任を負う。これに対して日本では課税庁(国税庁)側が立証責任を負うため、職員の負担が大きい。「納税者の申告が適正か否か」を判断する法定資料の提出を求めるうえで必要な資料情報制度も、官公庁の協力体制などを含め、欧米諸国と比べると貧弱である。

米国をはじめ先進諸国には納税者番号制度が整備されている国が多いが、日本にはなかったため預金等の口座の名寄せが不可能で、不正蓄財の見逃しが多かった。2016年から始まった「マイナンバー(社会保障・税番号制度)」で、どこまでしっかり取り締まれるかである。

国税庁は最近、富裕層の税逃れの監視に力を入れており、2014年に東京・名古屋・大阪の各国税局に「超富裕層プロジェクトチーム」を設置した。高度な節税策による国際的な税逃れの防止を強めるためだ。東京国税局ではその一環として、2016年に富裕層担当の「特別国税調査官」という専門職員を麻布・世田谷・渋谷の3税務署に配置。今後、配置先を増やしていく。

そうした状況でもあるだけに、国税庁の活動を支える人員増強や行政面での仕組みの強化が急がれよう。格段の陣容強化や徴税力強化に向けた制度整備が望まれる。

第2次世界大戦後、GHQ(連合国軍総司令部)は、米国からコロンビア大学教授のカール・S・シャウプ博士ら7人の財政・経済学者からなる日本税制使節団を招いた。

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彼らが1949年にまとめた報告書は「シャウプ勧告」と呼ばれる。その内容は『シャウプの税制勧告』(シャウプ税制研究会編、福田幸弘監修/霞出版社)に詳しいが、税務当局の人員増加についても、このシャウプ勧告のくだりが注目される。「所得税及び法人税の執行」の章中、[職員の増加]の項には、こうある。

「人事に関する(中略)行政上の改善の一切の基となる基本的な要請は、税務職員の人数を増やすことである。十分な数の税務職員を採用するのを拒むことは[一文(いちもん)吝(おし)みの銭失い]である。

税務行政に支出される徴税費は、徴税額の著増によって十分報いられる。(中略)例え、単に支出された徴税費と徴税収納額のことだけを見ても、終局の結果は確かに政府にとって有利となるであろう。その上、もし租税措置が適正に施行されれば、政府およびその法律について多くの収穫が得られることになる」

「財政再建」「正常な徴税行政」を真剣に考えるなら、今一度、かみしめなければならない言葉だろう。

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