今のNHKに「受信料制度」は本当に必要なのか 放送法の理念とは大きくかい離している

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しかし、さまざまな思想の傑物が互いに牽制し合うことで、幅広い支持者を得、時の首相といえども独走が許されなかったかつての自民党と、今の自民党は違う。

だからこそ、実際に国家権力が番組制作に干渉するかどうかの問題ではなく、それが可能な制度になっているということが問題なのだ。国家権力からの独立性が確保できないのであれば、受信料制度を維持する大義名分は失われる。

職員の平均給与は1100万円

NHKは民放では考えられないほど贅沢に番組制作にお金を投入する。職員の給与水準も高い。2016年度のNHKの経常事業支出は6910億円。このうち給与(退職金、厚生手当含まず)は1110億円。2017年3月末時点の職員数は1万0105人で、平均年齢は41.1歳。1人当たりの給与は1098万円という計算になる。

税金で運営する国営放送になれば、お金の使い方も現在とは大きく変わるだろう。『クローズアップ現代』の国谷裕子キャスターの降板騒動、高市早苗総務相(当時)の電波停止発言など、国家権力からの独立性を疑われてもおかしくない事態が次から次へと発生している状況からすれば、今のNHKならいっそ国営放送になったほうがわかりやすい。

だがしかし、果たしてそれで良いのか。NHKが国家権力からの独立性を確保できている報道機関であると、国民が心から信じることができれば、受信料に対する理解は格段に高まるはずだ。

経営委員の任命権を国家権力が及ばないところへ移す法改正は、官僚主導の立法では無理だ。議員立法でも党議拘束でがんじがらめの自民党議員には期待できない。このところ不甲斐なさばかりが目立つ野党議員の奮起を望む。

伊藤 歩 金融ジャーナリスト

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いとう・あゆみ / Ayumi Ito

1962年神奈川県生まれ。ノンバンク、外資系銀行、信用調査機関を経て独立。主要執筆分野は法律と会計だが、球団経営、興行の視点からプロ野球の記事も執筆。著書は『ドケチな広島、クレバーな日ハム、どこまでも特殊な巨人 球団経営がわかればプロ野球がわかる』(星海社新書)、『TOB阻止完全対策マニュアル』(ZAITEN Books)、『優良中古マンション 不都合な真実』(東洋経済新報社)『最新 弁護士業界大研究』(産学社)など。

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