「自動ブレーキ」の安全性能はまだ発展途上だ 「ぶつからない」車の実力が過信できない理由

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消費者の車選びの参考にしてもらうとともに、自動車メーカーに安全な車の開発を促す狙いがある。

2017年度上半期に評価対象となったのは、国内自動車メーカー8社の8車種(同一車型とOEM車は1車種とカウント)で、販売台数や安全運転支援装置の有無などを考慮して選定された。

評価結果の中で車種ごとの差が顕著だったのは、被害軽減ブレーキが歩行者を認識して衝突を回避する実力だ(表参照)。警察庁の発表によると、国内では交通事故による死者数のうち、歩行者が占める割合が約4割と最も多い。

かつては自動車乗車中の死者数が最多だったが、2008年以降は歩行者の死者数が上回り、歩行者に対する安全対策は急務となっていた。

アイサイトの弱点は40キロ以上?

こうした中、2016年から開始されたのが対歩行者の被害軽減ブレーキの評価だ。試験方法は、道路横断中の歩行者のダミーに試験車を接近させて、警報と被害軽減ブレーキの作動状況を評価する。基本的に人為的なブレーキ操作は行わない。

見通しの良い道路を横断する場合と、駐車中の車(以下、遮蔽物)の陰からダミーが出てくる場合の2パターンで実施。時速10キロから同60キロまで5キロ刻みの速度で試験され、衝突回避できれば減点はなく、衝突した場合は、衝突前にどの程度速度が低下していたかで減点の幅が変わる。

加えて、歩行速度を上げた場合と子供のダミーを使った試験結果も得点に反映される。

試験の結果、減点がゼロ(25点満点)だったのは日産のノート。マツダのCX-5が0.5点減点でそれに続いた。CX-5の減点理由は、55キロと60キロの試験(遮蔽物のない場合)で、ダミー人形に衝突してしまったこと。衝突した際には約8〜20キロに減速していたが、危険を回避できなかった。

被害軽減ブレーキ(対歩行者)で満点を取った日産ノートの評価試験の映像。遮蔽物がある場合でも余裕を持って停止している。(映像:自動車事故対策機構)

安全運転支援機能の元祖ともいえるアイサイトを搭載したスバルのレヴォーグは22.5点。CX-5と同様に、遮蔽物のない時速60キロの試験をクリアできなかったうえ、遮蔽物がある35キロ、40キロ、45キロの試験で、減速したもののダミーに衝突してしまった。

スバルは2016年度の評価結果でもアイサイトを搭載したインプレッサが時速40キロ、45キロをクリアできず、フォレスターも45キロの試験で危険回避できなかった(いずれも遮蔽物のある場合)。これらの結果から考えると、「40~45キロ以上の中速で走行中に、物陰から出てくる歩行者の認識」にアイサイトの〝弱点〟があるかもしれない。

最も減点が多かったホンダのフィットは、時速15〜20キロの低速時と45〜60キロの中速時に遮蔽物がない条件でも危険を回避できないケースが多かったことが響いた。

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