ソニー復活を支えるイメージセンサーの前途 大きなチャレンジに直面している
そのCCDに転機が訪れたのは2004年。「CMOSがCCDの性能を上回るめどが立ち、これからはCMOSだと社内が一気に変わっていった」(ソニーセミコンダクタソリューションズ社長の清水照士氏)。その2年前にわずか十数人で産声を上げた開発部隊は「CMOSセンサーナンバーワンプロジェクト」の大号令のもと、5年間で200人近くまで拡大していった。
そうした中で生まれたのが、08年に開発した裏面照射型CMOSセンサーだった。光の入射の邪魔になっていた配線と基板の位置を反転。シリコン基板の裏側から光を照射することで、高感度を実現した。
「イメージセンサーを良く知っている人ほど、裏面照射はノイズが出てものにならないと思っていた」(平山氏)。
実は立ち上げ当初の開発部隊は社内からの寄せ集めで、経験者は1人しかいなかった。後発組で挑戦しやすい環境にあったことに加え、経験者が少なく物おじしなかったことが成功につながった。
センサーづくりはレシピが重要
足元ではサムスンもイメージセンサー事業を強化しているが、清水氏は「CCDで培ったノウハウはCMOSにも活かされていて、そう簡単にまねできない」と自信を示す。
米運用会社インダス・キャピタル・パートナーズのマネージングディレクター、アンドリュー・ダニエルズ氏は「ソニーのプロセス技術は、ある種の『匠の技』だ」と指摘する。
とはいえ、以前に比べればその距離は縮まっている。市場では同社のイメージセンサー技術は他社に比べて2─3年先行していると言われているが、清水氏は「チャンピオンデータ(一番良いデータ)で比べたら、もう差はない」と至って冷静だ。
では、どこに差があるのか。「われわれは安定した歩留まりで何万枚も作れるが、他社は難しいだろう」と清水氏は語っている。
ソニー関係者は「半導体は微細化が進み、そのために先端技術が必要だ。イメージセンサーはそこまで先端技術は必要ないが、その代わり料理と同じレシピが必要となる。何百もある工程のノウハウが味に効いてくる」と話す。
ソニーは現在、第2の柱としてセンシングにも力を入れているが、平山氏は「今は遅れているかもしれないが、センシングでもナンバーワンポジションを十分に取っていけるのではないか」とイメージセンサーの成功体験をセンシングに重ねた。