「消費増税で教育無償化」なのに法改正なし? 首相への「忖度」で決めず、国会論戦すべきだ

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一方で、12月8日に閣議決定された新しい経済政策パッケージの人づくり革命の項目には、幼児教育の無償化、待機児童の解消、高等教育の無償化、私立高等学校の授業料の実質無償化などが並ぶ。このうち、一体改革の内容から明らかに逸脱していそうなのが、高等教育の無償化と私立高等学校の授業料の実質無償化だ。

経済政策パッケージによると、高等教育の無償化では、低所得層に限定して国立大学の授業料や入学金を免除(私立大学では平均授業料を勘案した一定額まで対応)。さらに、給付型奨学金の支給額も拡大させるという。私立高等学校の授業料では、年収約590万円未満の世帯を上限に段階的に授業料相当金額を支給する。

これらは、子ども・子育て支援法の内容とは齟齬がある。同法の定義する「子ども」とは、「18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある者」。また、「教育」は「満3歳以上の小学校就学前子どもに対して義務教育及びその後の教育の基礎を培うもの」となっている。

法の拡大解釈でどんな政策に使うことも可能に?

新しい経済政策パッケージでは、高等教育の無償化の項目に「低所得層の進学を支援し、所得の増加を図り、格差の固定化を解消することが少子化対策になるとの観点から……」との文言が添えられている。大学進学によって高所得を得ることでその当事者が将来、子どもを産みやすくなる、という意味のようだ。

このような文言をあえて入れたのは、逆に言えば、安倍政権自体が、高等教育の無償化は消費税の使途における少子化対策とは言いにくいことを意識しているからだろう。こうした拡大解釈が許されるのなら、たとえば「公共事業拡大や成長戦略によって国民の所得増加を図ることが少子化対策になる」など、どんな政策でも消費税収の活用が可能になってしまう。

こうした状況下、法改正に腰が引けているのが役所だ。消費税法改正の必要性に関して、所管の財務省では「低所得者層では、教育費が子育てに当たっての不安要素になるとのアンケート結果もある。新しい経済政策パッケージの書き方も消費税法の規定を踏まえたものになっている。高等教育の無償化は少子化対策だと法律的に読めないことはない」(財務省主税局税制第二課)と答える。

また社会保障改革プログラム法を所管する内閣官房の社会保障改革担当室は、「今後、制度作りを詰めていく中で必要があれば改正するが、新しい経済政策パッケージは一体改革とは別の議論として出てきたもの。消費税の税収使途を変えるという意味では、対応するなら消費税法になるのでは」という。

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