「スーパーあずさ」に登場したE353の凄い実力

カーブ時の乗り心地が従来とは大きく違う

E351系の傾斜角は5度で、E353系は同1.5度とE351系よりも3.5度も小さいが、はたしてE353系の遠心力は0.08G以下に収まっているのか。このことをJR東日本に確認してみたところ、1.5度でも遠心力は0.08G以下に収まっているとのことだ。だったら、なぜE351系は5度も傾ける必要があったのか。

停車中のE353系(筆者撮影)

前述のとおりE351系は制御付自然振子装置を搭載している。この振子装置の原点は制御の付かない自然振子装置で、1973年に381系として実用化され、中央西線「しなの」、紀勢本線「くろしお」、伯備線「やくも」に投入された。

自然振子装置は特殊な台車を使用しており、台車上で車体が左右に傾く仕組みとなっている。車体は空調を含めて重量物を全て床下に搭載して重心を下げている。そして381系がカーブ区間に進入すると、遠心力によって床下機器のある車体下部がカーブの外側に移動する力を利用して、客室のある車体上部をカーブの内側に傾斜させて、遠心力を0.08G以下としている。

しかし自然振子式には大きな弱点があった。それはカーブが始まらないと車体が傾斜しないのだ。これを振子遅れと言うが、カーブが始まってから車体の傾斜が始まるまでの間でも遠心力0.08G以下に抑えるために、必要以上に車体を傾斜させる必要があり、その結果、振子車の傾斜角度は5度となった。

カーブ前から傾斜する必要があった

この振子遅れなどを解消するために、国鉄時代末期から研究されたのが制御付自然振子装置だ。これは振子台車に振子シリンダを装備して、カーブの手前から予め車体の傾斜を開始させる「カーブの予見」機能などを持たせたものだ。

カーブを予見させるためには、走行線区の線形を把握する必要がある。そのため制御付自然振子式の車両には線路マップを搭載している。そして車上の速度発電機や、ATS地上子などの地上の地点ポイントを利用して自車の走行位置を特定するとともに、線路マップに基づきカーブ手前で車体を傾斜させてカーブに進入する。制御付自然振子式によって振子遅れを解消するとともに、その分カーブの通過速度もアップ。各地の特急に採用された。

制御付自然振子式は自然振子式をベースとして車体を5〜6度傾斜させているため、カーブ区間の遠心力に余裕がある。そのためJR北海道やJR四国では、さらなるスピードアップの可能性を模索したが、実現には至らなかった。

次ページ振子式、車体傾斜式のメリット・デメリット
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