カフェで起業する人がだいたい失敗する理由 ロマンとソロバンを両立できないと勝てない
「FLRコスト」とは、F=フードコスト(原材料費)、L=レイバーコスト(人件費率)、R=レンタルコスト(家賃比率)を合わせた費用を、売上高で割った比率を示す。フードビジネスコンサルタント・永嶋万州彦(ますひこ)氏(元ドトールコーヒー常務)によれば、「経費の合計であるFLRコストの数値は70%未満、できれば65%が理想」だという。
たとえば、コメダが朝の時間帯の「モーニングサービス」で無料提供する「ゆで卵」は、エッグトーストやエッグサンド、ミックスサンドといったメニューの具材に応用する。メニューの数に比べて、利用する食材が少ないことで「F」を抑えている。冬の時季は温かいコーヒー(原価率も低い)が多く出るので、より「F」も低くなる。
店の立地も「郊外型店」は、幹線道路よりも生活道路沿いに出店することが多い。クルマ社会の地方で、広い駐車場を確保した店にしても、生活道路沿いなら「R」が安くすむ。
“ロマン”を上手に販売する「サザ」
東証1部上場企業に成長したコメダに対して、サザは、コーヒーを徹底追求する個人店だ。店で出すコーヒーは400円台から1000円を超えるものもある。土産用のコーヒー豆も多数あり、コーヒーのおいしさにファンとなったお客が買う、コーヒー豆も“ドル箱商品”だ。たとえば200グラムで1500円の「徳川将軍珈琲」は、月に1000個以上も売れる。単純計算だが、同じ客が500円のコーヒーを飲み、この豆を買えば「客単価=2000円」だ。
自家製スイーツもある。「カステラショートケーキ」のような生菓子もあれば、「サザ特製カステラ」(焼き菓子)も人気だ。本店(茨城県ひたちなか市)では雑貨売り場も充実し、地元・茨城の「笠間焼」食器を買うお客も目立つ。これらも客単価の上乗せに貢献している。
この両店は以下の共通点もある。
・「ごはんモノ」は出さない (コーヒーに合うパンメニュー主体)
・「常連客」に配慮するが、特別視はしない
下の項目は、店の永続性としても欠かせない。常連客のたまり場で、一見客が入ってきたら、〈オレたちのシマに何しに来た?〉といった視線で迎えられる店は長続きしない。
3年続く店は少ないという現実はあるが、カフェ(喫茶)業界は、近年は市場規模も拡大する再成長市場だ。目的意識を持つ、若い世代の開業が相次ぐ業界でもある。まもなく新しい年を迎える。年末年始に好きなカフェを訪れながら「夢を描く」のも楽しいかもしれない。
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