カフェで起業する人がだいたい失敗する理由 ロマンとソロバンを両立できないと勝てない

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
『20年続く人気カフェづくりの本 茨城・勝田の名店「サザコーヒー」に学ぶ』(プレジデント社)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

「FLRコスト」とは、F=フードコスト(原材料費)、L=レイバーコスト(人件費率)、R=レンタルコスト(家賃比率)を合わせた費用を、売上高で割った比率を示す。フードビジネスコンサルタント・永嶋万州彦(ますひこ)氏(元ドトールコーヒー常務)によれば、「経費の合計であるFLRコストの数値は70%未満、できれば65%が理想」だという。

たとえば、コメダが朝の時間帯の「モーニングサービス」で無料提供する「ゆで卵」は、エッグトーストやエッグサンド、ミックスサンドといったメニューの具材に応用する。メニューの数に比べて、利用する食材が少ないことで「F」を抑えている。冬の時季は温かいコーヒー(原価率も低い)が多く出るので、より「F」も低くなる。

店の立地も「郊外型店」は、幹線道路よりも生活道路沿いに出店することが多い。クルマ社会の地方で、広い駐車場を確保した店にしても、生活道路沿いなら「R」が安くすむ。

“ロマン”を上手に販売する「サザ」

サザコーヒー本店のカウンター

東証1部上場企業に成長したコメダに対して、サザは、コーヒーを徹底追求する個人店だ。店で出すコーヒーは400円台から1000円を超えるものもある。土産用のコーヒー豆も多数あり、コーヒーのおいしさにファンとなったお客が買う、コーヒー豆も“ドル箱商品”だ。たとえば200グラムで1500円の「徳川将軍珈琲」は、月に1000個以上も売れる。単純計算だが、同じ客が500円のコーヒーを飲み、この豆を買えば「客単価=2000円」だ。

自家製スイーツもある。「カステラショートケーキ」のような生菓子もあれば、「サザ特製カステラ」(焼き菓子)も人気だ。本店(茨城県ひたちなか市)では雑貨売り場も充実し、地元・茨城の「笠間焼」食器を買うお客も目立つ。これらも客単価の上乗せに貢献している。

この両店は以下の共通点もある。

・「ごはんモノ」は出さない (コーヒーに合うパンメニュー主体)

・「常連客」に配慮するが、特別視はしない

ホットドッグとクラムチャウダー

下の項目は、店の永続性としても欠かせない。常連客のたまり場で、一見客が入ってきたら、〈オレたちのシマに何しに来た?〉といった視線で迎えられる店は長続きしない。

3年続く店は少ないという現実はあるが、カフェ(喫茶)業界は、近年は市場規模も拡大する再成長市場だ。目的意識を持つ、若い世代の開業が相次ぐ業界でもある。まもなく新しい年を迎える。年末年始に好きなカフェを訪れながら「夢を描く」のも楽しいかもしれない。

高井 尚之 経済ジャーナリスト、経営コンサルタント

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

たかい なおゆき / Naoyuki Takai

学生時代から在京スポーツ紙に連載を始める。卒業後、日本実業出版社の編集者、花王情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画・執筆・講演多数。近著に『なぜ、人はスガキヤに行くとホッとするのか?』(プレジデント社)がある。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事