鉄道「高速化競争」から欧州が離脱した理由 「世界最速」の中国とは異なる事情がある
JR東日本は2012年に発表した中長期経営計画の中で、東北新幹線における将来的な時速360km運転の実現を掲げていたが、すぐには実現へ向けて進まず、まずはE5系新幹線による320km運転からスタート。2017年7月になって、北海道新幹線が全線開業する2030年度までに車両開発や設備改良を進め、360kmでの運転を実現するとしている。
日本と同様に比較的国土が狭く起伏のある欧州でも、時速300km以上の高速運転には意外と消極的だ。現在、欧州で最速の列車は、フランスの高速新線LGV東ヨーロッパ線で、東北新幹線と同じ最高時速320kmで運行されている。それ以上の速度に関して具体的な計画として挙がっているのは、イタリアの高速列車フレッチャロッサの360km運転があるだけで、欧州における高速列車のパイオニアであるフランスやドイツなどでは、その具体的な計画すらない。
「高速化より定時性が重要」
その唯一の計画を掲げるイタリアは、最新型車両フレッチャロッサ・ミッレ(ETR400形)で速度向上試験を重ね、2016年2月にはイタリア国内最高速度記録の時速393.8kmを記録した。営業認可の取得には、試験走行で営業最高速度+10%の安定した走行が求められるため、営業速度360㎞を実現するためには、少なくとも396㎞を達成することが条件となる。しかし、393.8㎞を記録したところで走行試験は終了した。
その後、イタリア鉄道(FS)のCEOマツォンチーニ氏は地元紙に対し、時速360km運転については最優先事項ではなく、当面は保留すると述べている。その理由は、利用客が求めるものは、最高速度向上によるわずかな時間短縮より、ダイヤ通りに走る定時性であるため、との見解を示している。
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