鉄道「高速化競争」から欧州が離脱した理由 「世界最速」の中国とは異なる事情がある
日本に新幹線が誕生してからすでに50年以上。この間に、世界各国では鉄道の最高速度向上のための研究が絶えず行われ、その技術は日進月歩で進化していった。特に、1990年にフランスの高速新線、LGV大西洋線が完成すると最高速度は時速300kmの時代へ突入し、欧州大陸を中心に高速新線の建設ラッシュとなった。
21世紀に入ると、中国が高速鉄道建設を本格的にスタート。欧州や日本のメーカーから車両を輸入し、それを基にして多種多様な高速列車を次々と生み出してきた。事故が発生したことで一時は勢いを失っていたが、その後も建設の手を緩めることなく次々と路線を延長し、2017年現在で世界一となる、2万2000kmの高速新線網を有する高速列車大国へと成長した。現在は、世界最速の時速350km運転を実現している。
「技術力」の問題ではない
一方、鉄道先進国であるはずの欧州や日本は2017年現在、最高速度は時速320km止まりで、あとから追いかけてきた中国の後塵を拝している。だが、これは技術的に欧州や日本が中国に追い越された、という意味と必ずしもイコールではない、という点に注意しなければならない。
日本ではJR東海の新幹線955形試験車両が1996年に時速443kmを達成しており、技術的に新幹線のさらなる高速化ができない理由はないが、現在はリニア開発へ注力しているため、これ以上の速度向上は行わないと考えられる。欧州では、フランスのTGV試験車両V150が2007年に時速574.8kmという前人未到の世界記録を達成しており、現在もこの記録は破られていない。
これらの速度試験は、日本では記録目的ではなく、
だが、営業運転における恒常的なスピードアップとは、試験車両で記録を達成したらすぐに可能という単純な話ではなく、信号システムの変更や軌道強化といった地上設備の更新や騒音対策など、インフラの整備も行わなければならない。
そのためには多額の費用が必要となるが、仮に最高速度を300kmから350kmへ引き上げたとしても、350kmで走行できる区間が短ければ時間短縮効果はわずかとなり、費用対効果で考えれば無理に設備投資をしてスピードアップをする必要はないという結論に至る。
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