頭がいいのに仕事ができない人の「思考の癖」 面白がって可能性を信じれば「必ずできる」

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2.【メイクイット思考:Make it】……可能性を信じる

どんなに高い目標を掲げたときでも、どんな難問に挑むときでも、「できるか、できないか」ではなくて、「できる解を探す」という心と頭の姿勢で臨む考え方だ。「大変な目標だ」「解決なんて無理だ」と思いながら考え始めたら、発想は広がらず、思考のエネルギーも続かない。心も頭も縮こまってしまう。

一方、「どんな高い目標や難問も必ず答えがあるはずだ」と考え、それを探し出す行為そのものを面白がって楽しめば、解に辿り着くための新しい視点や斬新なアイデアが次々と生まれてくる。こうした思考を「できる:make it」にちなんで「メイクイット思考」と呼ぶことにする。

3.【インサイト思考:Insight】……好奇心で掘り下げる

どんな組織の中でも、表層的なとらえ方、抽象的なアイデア、一般論でとどまっているケースが非常に多い。これでは高い目標の達成や重要課題の解決にはつながらない。徹底的に掘り下げていく分析的思考を極めることで、初めて課題の本質やユニークな答えが見えてくる。

分析的思考は訓練で上達する。WhyとHowを繰り返すことで深く掘り下げていける。ところが高い目標、難しい問題であればあるほど、WhyとHowが繰り返せなくなり、行き詰まってしまう。そんなときに役立つのが好奇心である。面白がり、興味をもって見続ければ、行き詰まりを突破し、その先のWhyやHowが見えてくるものだ。

好奇心を持ち続け、「それはなぜなのか? それはどういうことなのか? それは何を意味するのか?」と考えを深めていく。思考自体を楽しみ、面白がる。こうして掘り下げて得た洞察は、ユニークで深いものになっているはずだ。

これを「洞察:Insight」にちなんで「インサイト思考」と呼ぶことにする。

4.【デッサン思考:Dessin】……あらゆる角度から考えを重ねる

ひとつの答えが出たところで満足せず、多角的に考えを重ねていけば、より多くのこと、より深いもの、より良い答えが見つかる。多くの視点から光を当てると全体像や本質が見えてくる。

普段の仕事の多くはルーティンだから、決まった位置と角度から仕事の対象を見ることが効率的だ。しかし「深く考える、難しいことにチャレンジする」という場合、そのやり方では答えが見えてこない。あるときはズームインしてアリの目で詳細を見る。あるときはズームアウトして鳥の目で俯瞰(ふかん)する。また、あたかも画家が線を幾重にも重ねながらデッサンをするように、考えをいくつも重ねて本質的な課題やベストの解を導き出す。

これを「デッサン:Dessin」にちなんで「デッサン思考」と呼ぶことにする。

「頭」だけでなく「心・体」との相乗効果を

これらの思考法を一つひとつマスターすることによって、「必ずできる」という思考法を支える土台ができていく。

4つの思考法はすべて、頭の使い方だけでなく、マインドセットと行動につながっている。したがって、思考法を修得するためには心と体の動かし方も変える必要が生じる。そしてまた、そのような思考法を使っていくと、マインドセットと行動も変わってくる、という相乗効果が生まれる。

3つの悪しき「思考の癖」を廃して、「必ずできる」ための4つの思考を駆使すれば、大きな挑戦や高い目標、難しい問題解決の実現可能性を劇的に高めることができる。

山梨 広一 元マッキンゼー・シニアパートナー

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やまなし ひろかず / Hirokazu Yamanashi

1954年東京生まれ。東京大学経済学部卒業。スタンフォード大学経営大学院(経営学修士)修了。富士写真フイルムを経て、1990年マッキンゼー・アンド・カンパニー入社。1995年からパートナー、2003年からシニアパートナー。小売業、消費財メーカーおよびその他業界の企業の戦略構築や組織改革、マーケティング、オペレーション改革など、マッキンゼー日本支社において最も豊富なコンサルティング経験を有する。2010~2014年まで、東京大学工学部大学院TMI(技術経営戦略学専攻)で「企業戦略論」の講座を指導、また同大EMPにて「消費論」の講義を行っている。2014年、マッキンゼー退社後、イオン株式会社執行役を経て顧問。2016年から株式会社LIXILグループ取締役、東京都顧問、マッキンゼーシニアアドバイザー。著書に『プロヴォカティブ・シンキング 面白がる思考』『シンプルな戦略 戦い方のレベルを上げる実践アプローチ』(ともに東洋経済新報社)、『マッキンゼーで25年にわたって膨大な仕事をしてわかった いい努力』(ダイヤモンド社)、『3原則 働き方を自分らしくデザインする』(SBクリエイティブ)などがある。

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