藤野:あと、これからの時代、銀行のライバルは銀行ではなくなります。もちろん、証券会社でもないし、保険会社でもない。まったくの異業種から本格的に銀行ビジネスに参入してくるところが出てくるのではないかと思っています。
アマゾンが本格的に攻めてきたら、どうするのか?
たとえばアマゾンが、「アマゾンコイン」のような仮想通貨を出してきたら、決済システムの中核にいる銀行にとって、ものすごい脅威になるはずです。仮想通貨は現在もどんどん国境を越えていますし、海外送金などにかかるコストなどは、銀行に比べて格段に安い。アマゾンはすでにモノの流通は押さえていますから、これにおカネが加われば無敵です。実際、優秀なメガバンクの人と話をしていても、アマゾンについての話題がどんどん出ます。いつか仮想通貨による決済ビジネスに乗り出してくるだろう、と。
中野:三菱UFJフィナンシャル・グループも仮想通貨の「MUFGコイン」を試験導入し始めていますよね。
藤野:でも、三菱UFJフィナンシャル・グループ単体では、とてもアマゾンに敵わない。たとえオールジャパンで仮想通貨に乗り出したとしても、アマゾンコインを凌駕するのはもちろん、肩を並べることすらできないでしょう。オールジャパンに、さらにドイツ銀行やゴールドマン・サックス証券あたりとも組んで、ようやくアマゾンに一矢報いることができるかもしれない、という程度だと思います。
中野:世界的に銀行の数が減っているのは事実ですが、改めて銀行の役割とは何かを考えると、間接金融の担い手であるわけです。銀行は、おカネの貸出先と直接関わることができる。これこそが間接金融の最大の強みなのですね。
金融庁がリレーションシップバンキングの基本的な考え方を打ち出して、借り手との長期継続的な関係から、経営者の資質や事業の将来性についての情報を得て融資を実行するというビジネスモデルを提示しました。簡単に言えば、借り手と一緒に悩み、問題をともに解決していく金融機関の在り方を示したわけですが、多くの銀行は、こうした間接金融の基本を忘れてしまっています。これをもう一度思い出し、基本に立ち返って実直に行うのが、銀行の生き残る道ではないでしょうか。
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