「品質問題」はどんなメーカーでも起こりうる ローランドベルガー・遠藤氏が語る根本原因

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(出所)遠藤氏作成資料

3つ目が、経営陣の問題だ。ここ5年で「攻めのガバナンス」という言葉が出てきたが、ガバナンスが内部統制や法令順守よりも、利益の追求にウエートを置くようになってしまった。いわば「コーポレートガバナンスのバランスの劣化」だ。

経営陣は一言も品質を犠牲にしていいとは言っていないが、利益重視の姿勢が生産現場への暗黙のプレッシャーとなった。経営陣が戦略策定やIR(投資家向け広報)などに忙しく、現場にあまり行かなくなり、現場との距離が広がった面もある。

そこに個別企業の要因が重なったのだろう。神戸製鋼や日産はより利益重視のプレッシャーが強かった可能性がある。名門意識からくるおごりや緩みもあったかもしれない。一部の企業には、経営戦略そのものに無理があったのではと思う部分もある。

構造問題であるかぎり、今回のような品質問題はどんな製造業でも起こりうる。品質第一の原点に回帰して、根本からやり直さなければならない。私は今回の一連の問題を深刻に受け止めている。

経営陣はもっと謙虚に受け止めるべき

――法令違反はなく、安全性には問題はないから、「本来公表しなくてもいい問題」と発言する経営トップもいました。

法令違反うんぬんではなく、顧客との約束を果たせていない段階ですでに問題だ。ましてや顧客の要望を満たすように、品質データを改ざんしていいはずがない。海外企業との取引なら、全数チェックを要求されてもおかしくない。経営陣はもっと謙虚に受け止めるべきだ。

品質は「基本品質」と「機能品質」に分けられる。基本品質とは製品として本来備えるべき品質で、最低限守らなければならないもの。そして、機能品質は差別化のために、顧客から個々に要求されるものだ。日本メーカーは主に機能品質を競い、成長してきた。

一連の発言を聞いていると、もともと要求の厳しい機能品質で約束を守れなかっただけ、という甘えを感じる。言い換えれば、自分たちは世界最高品質を目指しているのだから、これぐらいは許されるという一種のおごりだ。

確かに日本メーカーは、基本品質については相当高いレベルを維持している。ただその分、価格は高い。顧客の側から見れば、日本メーカーの信頼性におカネを払っていた側面がある。日本企業なら変なことはないだろうというプレミアム。改ざんが行われていたとなれば、その根底が崩れてしまう。

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