日本をスルーするフィンテック企業の本音

「シンガポールから2~3年は遅れている」

NECのブースで紹介されていたのは“顔認証技術”を活用したキャッシュレス決済システム(筆者撮影)

東京を通り越してまずシンガポールへ

一方で、シンガポールに駐在している日本の金融関係者からは、こんな声も聞かれた。「世界のスタートアップは、軒並み東京を通り越してまずシンガポールに来る。シンガポールはすべてが早い。政府も国を挙げてフィンテック分野を後押ししているから、規制緩和も柔軟に応じるし、実証実験もしやすい。体感としては、日本はもはや2~3年くらい遅れている印象。技術大国であぐらをかいていられる時代は終わっている。言語や規制の面でも圧倒的なデメリットがあることを認識しないと、世界の優秀なスタートアップがあえて日本を選ぶ理由は少ない」

確かに、フィンテック・フェスティバルの会場で、インドから参加していたスタートアップ関係者に「なぜ日本ではなくシンガポールを選んだか」をあえて尋ねると、笑いながら「うーん、日本。考えてもみなかったね」と返された。技術大国ではあるが、言語や規制面などからしても、東京に赴く理由が見当たらないのだという。気を使ったのか「桜は美しいですよね」と付け加えられ、こちらもあいまいに笑い返すしかなかった。

余談だが、ランチスペースで一緒になったカザフスタン人の男性からは、名刺交換をしようとすると当然のように名刺表面に印刷されたQRコードをぐいっと示された。「これを読み取ってくれさえすればいい、日本ではメジャーじゃないのか? あれだけの技術大国なのに」と冗談交じりに言われる一幕もあった。

カザフスタンの起業家男性は名刺交換で QRコードを示してきた(筆者撮影)

確かにQRコードを名刺に入れ込んでいるケースも最近は見掛けるが、当たり前のようにコードをかざし合う光景はあまりお目にかからない。さらに、シンガポールの通信大手スターハブの社員からは、「日本ではいまだに“現金信仰”が強いですよね。クレジットカードより現金で持っていたほうが安全だし、不安がないという理由だと聞いたことがあるけど、なぜ?」と問われた。実際に日本を旅行した際、クレジットカードが使えない店舗がいまだに多いことに驚いたともいう。

日本は国内のマーケットだけで完結してしまうケースが多く、おのずと世界に飛び出る傾向が弱いと言われる。日本貿易振興機構(ジェトロ)が進出支援するベンチャー企業も個別のブースを構え、日本酒の樽とグラスを用意して対応をしていたが、全体から見るとまだ日本発のフィンテック関連企業の数は少ない。

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