セクハラが隠蔽されてしまう広告代理店の闇 「私は守秘契約を結んで会社を辞めた」

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一方、この業界に最近転職した前述の女性は、ハラスメントを許容しているのは「クリエイティブ」だけではないと語る。明らかなセクハラだけに限らず、アグレッシブであることが仕事のやり方として称賛されているという。

「ランチで女性に他の女性の写真を見せたがる人を知っている。彼は頼んでもないのにランチをおごったりしてきた。また女性のデスクに頼まれてもいないのにチョコレートのお菓子を置いたりしていた。セクハラというと、何かとても悲惨な事態が起きないといけないと思っている」

本稿に関して米DIGIDAYが取材をした人ほぼ全員が、実名で語らない理由としてグスターボ・マルティネスの件を引き合いに出した。2016年3月、WPP傘下のマーケティング・コミュニケーション会社であるジェイ・ウォルター・トンプソン(J. Walter Thompson、以下JWT)でコミュニケーション最高責任者を務めるエリン・ジョンソン氏は、人種差別的かつ性的な発言をしたとしてマルティネス氏を訴えた。WPPはマルティネス氏を擁護、JWTは法律事務所を雇って、同氏を辞任させた。

しかし最近になって、マルティネス氏はまだWPPの海外オフィスでオペレーションのリーダーとして勤務していることが報じられ、大きな波紋を呼んだ。クリエイティブ業界における女性の地位向上を訴える3%カンファレンス(The 3% Conference)が実施した調査でも、業界内でハラスメントが蔓延していることが告発された。WPPは示談はせずに訴訟はまだ継続中だ。

訴訟の結果がどうであれ、業界で働く女性が実名で告発したくない象徴のような事件だ。「これだけ公な事件になってしまっている。弁護士がいて、訴訟を起こすだけのおカネがあっても、勝つことができない。業界にとっても大きなダメージだ」。

どんな人と出くわすかもわからない

「この業界は移り変わりが激しいし、人の移動も激しい」と、ニューヨークの女性エグゼクティブは言う。怪しい人が来ても、何か不都合なことが起これば、ほとんど何も聞かれないまま、去ってしまう。また女性からしてみれば、どんな人と出くわすかもわからない。「少なくとも、女性も男性も怪しい人間が誰か知っていること。実際に、セクハラでクビになってどこにも転職先を見つけられない人間はいる」。

裏では密かに噂が広まっている。女性は互いに警告しあい、男性上司も若い女性に警告を与える。セクハラ常習犯と知られている男性がいる場合、同席してくれるような男性もいる。「ショット飲みが大好きなクライアントがいた。私の男性の上司が言ったのは『ショットを持って、肩越しに捨てて、去れ』だ。そうすればその場の空気を悪くせずにいられるし、また自分側の人間に頼ることもできる」と、メアリー氏は言う。

メアリー氏はほかの手段も身に付けた。彼女が仕事を探すとき、リーダーシップの役職についている女性が何人いるかをチェックするのだ。もしも十分な数だけいれば、その会社、仕事を検討するという。「私は多くのことを学んだ。被害者である、というのはとても複雑な状況だ。しかし(被害者にならないために)多くのことを聞いて、多くの経験をしてきた」。

Shareen Pathak(原文 / 訳:塚本 紺)

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DIGIDAY[日本版]編集部

2015年9月1日にローンチした「DIGIDAY[日本版]」を運営。同サイトでは米「DIGIDAY」が日々配信する最新のデジタルマーケティング情報をいち早く翻訳して掲載するほか、日本国内の動向についてもオリジナル記事を配信している。メディアジーンが運営

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