グローバルエリートと日本型エリートの違い
――日本企業で行われている社内政治的なものと海外のそれとでは、また全然レベルが違うものなのでしょうか。
ムーギー:まあ、グローバルになってくると、そもそも本部の偉い人とは日頃、会わないわけでしょ。いちばん偉い人はロンドンの本社にいて、その下に東アジア一帯を見るリージョナルマネジャーがいて、その下にジャパンマネジャーがいて、その下に部長がいて、その下に自分がいて、となると最終的なパワーを持つロンドンの本社に情報が行くまでに、壁が4つ5つある。
だから自分の優秀さを実績だけで上に認めてもらおうなんて思うのは、酔狂ざたですよ。直属の上司のフィードバック以外、上の人たちはほぼみてくれないので、静かに黙々と働いていたところで、ボスに嫌われたら一発アウトです(そのボスが、そのまたボスに嫌われて首にならない限り)。
僕、最近、MBAの学生にアンケートを取ったんです。「過去5~6年、コンサルタントなり投資銀行なりで働いた中で、5年前の自分にアドバイスしたいことは何か」って。これ読んでいるマスコミの方、データが欲しかったら私に言うてくださいね。高値で売りますから。
それでね、すごく面白かった回答があるんです。この人はグーグルを経て某金融会社で働いた人なのですが、その人いわく、「自分がいい仕事をしたら、それで認められて引き上げてもらえるなんて思うたら絶対あかん」と。もちろんいい仕事をすることも大事だけれど、その倍ぐらいの力を、いかに自分がいい仕事をしたかをアピールすることに注ぐべきだと。
もちろんアピールしすぎたら、それはそれでちょっとキズがつくんだけど、それは自分のキャリア形成のうえで不可欠な当然の努力。それができてないのに、コツコツやってさえいれば周りが認めてくれると思うのは大間違いだと。日本の場合、アピールすることを悪いとする文化があるじゃないですか。いい仕事さえしていれば、周りは必ず見ていてくれる、お天道様は今日もどこかで見てくれるみたいな。今やそこに雲が4重5重にかかっているのに、まだお天道様を信用しているんですよね。
――うまいこと言いますね。
ムーギー:また対談に、呼んでや(笑)。
やっぱりネイティブ英語は強い
ムーギー:あとグローバルエリートと日本のエリートの違いでいえば、やっぱり“コミュニケーション能力”の問題がある。
楽天の三木谷浩史さんが面白いことを言っています。楽天は別に英語のできる会社になろうとしてへん。ただ、下手な英語ができる会社になろうとしているのだと。つまり最低限の英語をできるようにしたいってことですね。そのレベルで十分なケースもあるのですが、いかんせんグローバルな金融とかコンサルティングのような世界では、どれだけ流暢にネイティブのように話せるかが、重要になってくる。そして何よりも、多少発音が悪くても、少なくともクリアにアーティキュレイトすることが非常に大切。
たとえばノルウェーのように何十兆円と持っている政府系のめちゃくちゃ大きいファンドや、ブリティッシュの企業年金ファンドのようなところには、うちに預けてくださいといって世界中からアセットマネジメント会社が殺到しますよね。でも金融の世界では、商品にそれほど差がない。そうなるとどこを選ぶかは、その人の印象、コミュニケーション能力がものすごく重要なのです。
関西弁がなまったような気合い系イングリッシュのオジサンが、よくわからないあいまいなことをぶつぶつつぶやくよりは、やっぱりソフィスティケートなロイヤル・ブリティッシュ・アクセントのネイティブな人たちが、明確に論理的に話すほうが選ばれる。だから綺麗な英語、クリアな英語と、何よりもクリアな論理が非常に大切。それがあってこそ、明確に相手が考えていること、言っている事を把握できますから。
商品自体での差別化が難しい業界では、なおさらコミュニケーション能力の差別化が重要になってきます。英語が下手で論理が不明瞭なだけで、IQは3割ぐらい低く見られますから。
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