武器を持たず海外に出る日本人
――やっぱり解雇は嫌だという人が多いのでしょうか。
城:そこはちょっと違うんですよ。有権者ではなく、厚生労働省や連合が反対している。
ムーギー:今の議論って、人を切っただけで終わってしまっているから、なんだか不足感があるんですよね。切った後の人たちをどういうふうに統合するのか。そのハウ・トゥ・インテグレートの議論が十分に、もしくは全然なされてない。
たぶん、解雇緩和の言説が広まった現段階において次に重要になるのは、クビになった人を社会に復帰させるためのスキームやオプションについて議論することじゃないですか。今のままでは教育バウチャー(教育補助金制度)とか、ハローワークで職業訓練をやれとか、どうみても効果のない、単にハローワークのおじさんの無駄な仕事を増やすだけ、みたいな方向に行っちゃう。最悪なのが、リストラに耐えてくれた企業にはこれだけ補助金あげます、みたいな制度。これは行政が逆に食い物にされちゃっている。
今後は正社員、正規社員を切れという話がある中で、切られた人にどんなことをやってあげたら、もしくはどんなことをサポートしてあげたら、結果的に国の労働力も雇用も高まり、労使の需給ギャップが縮まって、よりよい状態になるのかを考えるべきでしょう。そのアイデアがないのに切ることばっかり進めたって仕方ないですよね。別に正社員を切ることを駄目だと言っているわけじゃなくて、その後に来るパッケージも含めて提案しないといけないでしょうね。
――前回は「半沢直樹」で盛り上がりましたが、あのドラマが扱うのは、「社内でいかにうまくやっていくか」という社内政治の話ばかりです。ただ、外資でも社内政治はたくさんあるわけですよね。
ムーギー:日系だろうが外資だろうが、会社で出世するかどうかは、ポリティカルなことはかなり大きいでしょう。いくつかの会社で世界各国の“社内政治の猛者たち”に接すると、「あー、そうそう、俺にはこれが足りんかったか」とか、「確かにこいつが出世したのはこうだからだな」というポリティカルパワーバトルが透けて見えてきますね。
こういうことはグローバルになるとますます重要になるわけですが、日本のビジネスパーソンが不幸なのは、社内ポリティクスやパワーポリティクスなどのマネジメントを学ぶ機会があまりないこと。たとえばMBAに行くと、「パワーアンドポリティクス」なんていって、どうやって社内政治を勝ち抜くかということを世界中から来るエリートの皆さんに教えるわけです。
その点日本とかアジアだと、“一生懸命働いて、黙って上の判断に任せる”が美徳とされ、仕事をアピールすると嫌われる文化ですよね。そういう社内政治の機微に関するトレーニング機会がないまま、武器を持たずに海外に放り出されている日本人エリートが多いなという気がするんですよね。
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