「上司にキレられた」とSNSに書く20代の心理 40代が20代と付き合うときの心得
さて、今回のテーマは「叱責」です。若者が慣れない仕事において先達から指導を受けることはいつの世でもあることです。ただ単に知識やノウハウを提供することもあれば、ダメ出しをして改善点を指摘することもあります。後者が今回のテーマです。タイトルのように、たいして酷い叱責をしたつもりでないのに、20代に過剰に反応されたと感じる人も多いのではないかと思います。この問題について考えてみましょう。
さて、まず申し上げたいのは、世界的に見て、日本人というのは、そもそも直接的なネガティブフィードバックを嫌う国民だということです。エリン・メイヤーの『異文化理解力』(原題:THE CULTURE MAP)によれば、国民性を測る8つの軸の中にネガティブな評価を直接的に伝えて欲しいか、間接的がよいかというものがあるのですが、日本はタイなどと並んで圧倒的にネガティブなことは「間接的」に伝えて欲しい国でした。恥をかいたら切腹したという武士の文化なのかわかりませんが、公衆の面前でネガティブフィードバックを直接的に受けることで、恥をかかされることは大嫌いなのです。実際、オッサンの私も大嫌いです。
どこまでが「公」か、世代によって大きく異なる感覚
では、どんな問題があっても、優しくせよ、甘くせよ、ということなのか。私が申し上げたいのは、そうではありません。中年世代と若者との間で何故この問題が生まれているかというと、私は、どこまでが「公」なのかというところが違うからだと思います。逆に言えば、どこまでが「内」かです。おそらく、我々オッサン世代と若者ではこの範囲が異なるのです。
オッサン世代は、音楽でもマンガでもメガヒットが生まれた時代を過ごした世代で、文化的背景に多くの共通点を持つことによる一体感を持っている世代です。会社に入っても、同期は仲間、もっと言えば社員は家族(これはもう言い過ぎですが)とシンプルに考え、「内」の範囲が広く、職場は「内」なのです。
ところが、20代の若者はそうではない。価値観も趣味も生育史も個別性が高くなり、「若者」とそもそも括ることすら違和感があるぐらい多様性に富む世代です。同期だからだとか、同じ部署だからとかだけで、いきなり「内」になる世代ではありません。細分化されたコミュニティだけが「内」であり、それ以外は全部「外」=「公」。そういう人が20代には相対的に多い。だから、我々世代が「内」と思って何でも腹を割って話してよいと勝手に思っている職場も、若者には「公」であり、口調はいくら丁寧でも「公」の前でネガティブフィードバックされた20代が心外に感じてもおかしくありません。