知の巨人「ジャック・アタリ」は何が凄いのか 近未来を的確に見通すためにやっていること

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ワープロが誕生したとき、こんなものでいい作品が書けるかと多くの作家がそれに背を向けたが、21世紀のいまでは、原稿は手書きでないとダメだなどという人はいない。仮にまだ生息していたとしても、どこの出版社からも相手にされないだろう。

パソコンが普及してきた頃もそうだった。そもそもファイルやディレクトリといったカタカナ用語が日本人向きではないからはやるはずがないと、多くの識者と呼ばれる人が堂々と主張し、いくつかの大手メディアもそれを支持する特集を組んだ。人々はより便利なものを求めるという歴史的な事実を、彼らはまるでわかっていなかったのである。

いつの時代も年寄りは、新しいものが出てくるのを嫌う。人生の残り時間の少ない彼らは、いまさら苦労して変化に対応するより、昨日と同じ日々が明日も明後日も続いてくれたほうがいいと思っている。だが、未来の持ち時間がたっぷりある若者はそうではない。彼らが目指すところはいまよりもっと豊かな未来であって、現状維持ではないのだ。だから、技術の進化は大歓迎なのである。

そして、世の中を動かすのはいつだってそんな若者たちなのだ。

いったん暴走し始めると歯止めが利かなくなるリスク

『2030年 ジャック・アタリの未来予測 ―不確実な世の中をサバイブせよ!』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

もちろん、テクノロジーの発達には危険な側面もある。

無秩序にAI開発を続ければ、AIが自己増殖を始め人間がそれらを制御できなくなって、映画『ターミネーター』のようなことが起こる可能性はまったくゼロではない。行きすぎた遺伝子操作が生命倫理を損ねることも考えられる。

そういうことが起こらないよう、これまでは西欧先進国がきちんと監視の目を光らせてきた。ところが、最近は中国、ロシア、中東、北朝鮮といった国も、最先端技術を手に入れたり、自ら開発したりできるようになってきている。そういう国は西欧諸国とは異なるルールで動いているので、いったん暴走し始めると歯止めが利かなくなるかもしれない。

彼らにどうやって利他の精神や、世界を救うことを第一に考えさせればいいのか、ジャック・アタリにぜひ聞いてみたいところだ。

(構成:山口雅之)

成毛 眞 元日本マイクロソフト社長、HONZ代表

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なるけ まこと / Makoto Naruke

1955年北海道生まれ。元日本マイクロソフト代表取締役社長。1986年マイクロソフト株式会社入社。1991年、同社代表取締役社長に就任。2000年に退社後、投資コンサルティング会社「インスパイア」を設立。現在は、書評サイトHONZ代表も務める。『amazon 世界最先端の戦略がわかる』(ダイヤモンド社)、『アフターコロナの生存戦略 不安定な情勢でも自由に遊び存分に稼ぐための新コンセプト』(KADOKAWA)、『バズる書き方 書く力が、人もお金も引き寄せる』(SB新書)など著書多数。

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