クックパッド、料理動画「今さら感」の打開策 "お家騒動"から2年、業績と株価の低迷が続く

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クックパッドの足元の状況は芳しくない。今2017年12月期の第3四半期(9月末)までの業績は売上高101億円(前年同期比約17%減)、営業利益41億円(同約32%減)まで落ち込んだ。毎四半期、売り上げも利益も縮んでいく事態に、株式市場も強く反応。株価は年初から約40%下落、ピーク時(2015年12月)からは約75%下落している。

低迷の要因は複数ある。米グーグルの検索アルゴリズム変更によりページの表示順位が低下、月間のアクティブユーザー数や閲覧数が減り、広告収入の減少につながった。さらに前出のような新興勢力にユーザーを取られている影響があるのは否めない。これを動画の新サービス投入だけで取り戻せるかは疑問だ。

もちろん、動画のライバル各社も攻勢の手を緩めていない。エブリーの吉田大成代表は「デリッシュキッチンのレシピは一つ一つ、管理栄養士などの有資格者やプロの料理研究家が作っている。ネット上に多くの料理動画が存在する世界になると、ユーザーが最終的に重視する基準は、やはり質になるはず」と、ユーザー投稿型とは違った強みを打ち出す。

海外事業も冴えない

岩田林平CEOは中長期的な成長を重視する戦略を強調した(記者撮影)

「100カ国でナンバーワンのレシピサイトを目指す」とクックパッドが意気込む海外事業も、月間利用者数がほぼ横ばいという冴えない状況が続く。ここ2年ほど、各国のレシピサービスの買収や、それに伴うサービス統合に時間を要しているという。加えて岩田CEOは、短期的な成長を追わない方針を強調する。

「圧倒的ナンバーワンを取るためには、グーグルやフェイスブックのように、ワンプロダクトで世界中に受け入れられる必要がある。多くの日本企業のように国別にカスタマイズすると、オペレーションがバラバラになり資源を集中して戦えない。今は目の前の利益に固執せず、サイトのデザインや使い勝手について全世界で通用する最適モデルを探している」(岩田CEO)。

クックパッドといえば、創業者で現取締役の佐野陽光氏と、前社長の穐田誉輝氏の経営方針の違いから勃発した“お家騒動”が記憶に新しい。3月の株主総会で穐田氏が経営から完全に外れ、一応の終息を迎えた。だが業績面を見る限り、新体制の経営はまだ安定感に欠ける。中長期の成長に向けた“我慢の時期”を乗り越えられるか。古参ネット企業の正念場である。

長瀧 菜摘 東洋経済 記者

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ながたき なつみ / Natsumi Nagataki

​1989年生まれ。兵庫県神戸市出身。中央大学総合政策学部卒。2011年の入社以来、記者として化粧品・トイレタリー、自動車・建設機械などの業界を担当。2014年から東洋経済オンライン編集部、2016年に記者部門に戻り、以降IT・ネット業界を4年半担当。アマゾン、楽天、LINE、メルカリなど国内外大手のほか、スタートアップを幅広く取材。2021年から編集部門にて週刊東洋経済の特集企画などを担当。「すごいベンチャー100」の特集には記者・編集者として6年ほど参画。2023年10月から再び東洋経済オンライン編集部。

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