トランプ大統領の支持率が上昇しているワケ 不人気だった大統領に2つの追い風が吹いた

✎ 1〜 ✎ 34 ✎ 35 ✎ 36 ✎ 最新
拡大
縮小

この2人の関係には、カリフォルニアの絆があると筆者は見ている。ミュラー氏は若き日に故郷を離れ、サンフランシスコで法律家生活を長年送ったことがあり、他方、オバマ氏はロサンゼルスで学生時代を過ごしている。法律論は別にして、この2人がクリントン夫妻やクリントン財団に、甘く対応していたことは衆目の一致するところだ。

そのミュラー氏は、ブッシュ元大統領には強く反発した。こんなエピソードがある。ミュラー氏がブッシュ氏と意見対立したとき、当時、彼の部下だったジェームズ・コミー氏を連れて一緒にFBIを同時辞職すると、ブッシュ氏に政治的脅しをかけたという。

その後、オバマ氏とウマが合ったミュラー氏は、オバマ再選戦略の中軸であるクリントン夫妻や、クリントン派閥支配下のクリントン財団に不利な情報を、議会にはまったく情報開示しなかった。もし情報開示を急いだら、クリントン夫妻の政治的命運はそこで尽きてしまうかもしれず、いわんや、オバマ再選のチャンスは、ほぼ確実に水泡に帰してしまうという「大人の判断」が働いたからではないか。

そうした論点は、今後の議会上院・下院における調査の重大関心事となろう。というのは、共和党の有力議員が、「本物のロシア疑惑」に関して、ミュラー氏は「足元が危うい」状況にあると明言しているからだ。

その共和党の有力議員は、この「本物のロシア疑惑」を、ミュラー氏は「米議会だけでなく、米国民にも明らかにしなかった」と厳しい言葉で糾弾している。そこで、国民のための捜査をするには、ミュラー氏以外に、もう1人の「特別検察官」が必要だという意見が議会で強まっている。

この「本物のロシア疑惑」には、日本企業もとばっちりを食っている。東京電力と東芝は、国際協力銀行とともに「ウラニウム・ワン」に出資し、20%近くの株式を保有していた。しかし、同社のロシアへの売却に伴い、同社株を手放すことになった。

トランプ大統領にとっては「2つの追い風」

この「本物のロシア疑惑」の捜査が急浮上していることが、トランプ大統領にとって追い風になっていることは間違いない。支持率の急上昇はそれを物語っている。

もう1つ追い風になっているのは、ハリウッドの大物プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタイン氏のセクハラスキャンダルが明るみに出たことだ。ハリウッドメディアを牛耳ってきたワインスタイン氏の落ち目は、ハリウッドメディアの落ち目であり、さらに米メディアに対する国民の目が厳しくなることを意味する。

トランプ大統領にとっては「2つの追い風」であり、1つ目の「本物のロシア疑惑」も、2つ目のハリウッドスキャンダルも、法的にはRICO法の角度から論じられている。

RICO法とは、もともとギャングなど組織犯罪を取り締まる法律として成立されたものだが、現在では、組織犯罪に限らず、何らかの仲間たちや企業、さらに政治家たちの民事および刑事訴訟など適用範囲が拡大している。

現在、「本物のロシア疑惑」では、RICO法が大きな争点の1つとして報じられ、FBI情報提供者が証人として喚問される可能性がある。また、ハリウッドスキャンダルでも同様に、思わぬ人物が証人喚問されることもあり得る。

次ページオバマ政権時代とぴったり重なる
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT