「中学時代、いじめを経験しました。今思えば、それは私にとってすごく大切な体験だったように思います。それまで仲がいいと思っていた友達が突然まったく口を利いてくれなくなったかと思うと、日に日に嫌がらせがエスカレートしていきました。上履きの中に水を入れられるとか、体操着を切り刻まれるとか、黒板消しに付いたチョークの粉で通学カバンを真っ白にされるとか。ずっと仲良しだった友達に、なんで自分がそんなことをされるのかがわからなくて、最初の頃私は『ごめんね、ごめんね』と言い回っていたんです。みんなと仲良くしたいし、周りから嫌われたくないと思っていたので……」
しかし、思い悩む日が続いていたある日、まるで稲妻が落ちたかのように、島田さんの頭の中のスイッチが切り替わる。
「あるとき、ふと『悪いことをしていないのに、なんで謝ってるのかな』と思ったんです。そして、『もうやめよう!』と決めました。私は私。万人に好かれる必要はない。そう思った瞬間から、自分が大好きな人や尊敬する人の助言にだけ耳を傾けることにしました。上履きに水が入っていればスリッパで歩く。体操着を切られたら家にある別の服で体育の授業に出る。カバンを真っ白にされたらそのまま通学する。されていることをいちいち気にしなくなったら楽になり、最終的には相手から謝ってきました」
この経験から、自分の気持ちに正直に生きるようになった島田さん。その後の人生にも大きな影響を及ぼしたようだ。
大学で「人事」というライフワークに出会う
大学では、国際関係学を学ぶつもりで慶應義塾大学に進学。しかし、2年生の秋学期に軽い気持ちで受講した「組織論」の授業が、島田さんのその後の人生を大きく変えることになる。
「企業から現役のビジネスパーソンを招き、実際に会社がどのように運営されているのか、組織や人事の現場についてお話をうかがう授業でした。父親はジャーナリストだったため、いわゆる『ザ・カイシャ』のカルチャーに縁がなかった私にとっては、すごく新鮮で、大きな衝撃を受けました。
そこから、会社は『人が集まってできているもの』だから働く人1人ひとりを元気にすることができれば、会社を元気にできるはずだ。働く人のモチベーションが上がり、みんながワクワク働けたら、どんなに楽しいだろう。『面白そう!これこそが私のやりたいことだ!』と思ったのです」
その直感に従い、大学3年次には人事・教育・キャリア分野を専門とする花田光世氏(現・慶應義塾大学名誉教授)の研究会に飛び込んだ。
第一人者の下で企業組織や人事について研究を重ね、就職では人を真ん中にしたビジネスに取り組む会社のみを志望、闇雲にたくさんの企業にエントリーすることはなかった。そして、最初の就職先として選んだのが人材派遣大手のパソナだ。
「説明会に参加したとき、その場の雰囲気や社員の皆さんの笑顔がすごく自然に思えました。ちょっとした瞬間に、社員同士が声を掛け合っている様子を見て、『素敵な会社だな』『ここで一緒に働いてみたいな』と感じて、直感で就職を決めました」
入社後、島田さんはベンチャー精神あふれる企業風土の中で、若くしてアウトソーシング企業の起ち上げに参画させてもらうなど、挑戦と経験に満ちた充実の4年間を送った。入社試験の時に感じた直感は、正しかったのだ。
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