日本人が知らないカンボジアの強権化と独裁 現地取材したジャーナリストが実態を告発

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高橋 智史(たかはし さとし)/フォトジャーナリスト 日本大学芸術学部写真学科卒業。2003年から、カンボジアを中心にアジアの社会問題と人々の営みを撮り始める。2007年よりカンボジアの首都、プノンペンに拠点を移し、秋田魁新報新聞連載「素顔のカンボジア」にて約4年間、同国の社会問題、生活、文化、歴史を集中的に取材し発表。現在もプノンペンに拠点を置き、土地強制収容などの人権問題に焦点を当て、Cambodia Daily, CNBC, The Guardianなどの英字メディアへの掲載を中心に、取材活動を続けている。2014年第10回名取洋之助写真賞、2016年三木淳賞奨励賞受賞。著作:フォトルポルタージュ『素顔のカンボジア』(秋田魁新報社)等。公式HP:http://satoshitakahashi.jp/

高橋:最近の動きでいうと、9月3日に、1993年のカンボジア国民議会選挙以降24年間カンボジアのジャーナリズムを導きカンボジア人の新たなジャーナリストを育てる役目を負っていた最も有名な英字新聞「Cambodia Daily」が、残念ながら630万ドル(約6億9000万円)に及ぶ未払い税の支払いを突如政権に突きつけられ、廃刊に追い込まれるという事態に陥りました。

「Cambodia Daily」はつねに政権による人権弾圧の現場など、政権にとって不都合な現場の取材を続け、それを発表してきました。よって、政権によってつねに脅迫や批判の対象になってきたのですが、来年2018年のカンボジアでの総選挙を迎えるにあたり、弾圧を強める政権によって廃刊に追い込まれるという事態に陥ってしまったのです。

さらに、政権と対峙し民主化の道のりを切り開こうと頑張っていた最大野党の「カンボジア救国党」も、その党首が突如逮捕されてしまうという事態に陥ってしまいました。それだけではありません。「Cambodia Daily」以外のメディアへも弾圧が広がっています。「Radio Free Asia」「Voice of Ameria」と呼ばれるアメリカ資本の政治色の強いラジオ局があるのですが、「Radio Free Asia」はプノンペン支局を閉鎖に追い込まれ、さらに彼らの報道を受けて流していた独立系のラジオ局15局以上が閉鎖に追い込まれるという事態に陥っています。

不都合な報道をするメディアが潰されている

:政権にとって不都合な報道をするメディアがことごとく潰されてしまってきていると。同僚のジャーナリストの方も逮捕されたそうですね。

高橋:私の取材現場でつねに顔を合わせるベテランのビデオジャーナリストがいたのですが、その方も「Radio Free Asia」で働いていました。残念ながら昨日(11月15日)に入ってきた情報によると、逮捕されてしまったということです。はっきりしないのですが、スパイ容疑がかけられ、このまま判決が下されると7年から10年くらいは拘禁されるのではないかと聞かされました。

:一方で、政府は、最大野党の解体をめぐる裁判を最高裁で行ってきたそうですね。共同通信によると「政府の転覆計画に関与したとして内務省から提訴された最大野党」と表現していましたが、判決がちょうど出たばかりなんですよね。

高橋:先ほど出ました。解党ということになる判決が下されました。

:政党そのものが最高裁で解党されるという事態は、民主化を目指して積み重ねてきた国のあり方としてはおかしいですよね。

高橋:そうですね。カンボジアの民主化の灯火は本当に完全に失われつつある、その危機に立たされていると思います。

:フン・セン政権がメディアを弾圧し、対抗勢力である野党を解党するに至ったのは、いったい何が原因なのですか?

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