日本人が知らないカンボジアの強権化と独裁 現地取材したジャーナリストが実態を告発

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:カンボジア国民の皆さんはこうした動きが進行していくのは黙っていられないとは思うのですが、ただ「マイノリティ」の問題と「マジョリティ」の問題は必ずありますよね。弾圧されるのは「マジョリティ」ではなく「マイノリティ」。カンボジア国民の皆さんはこのような現状をどうとらえているのでしょうか?

高橋:先ほどもお話ししたように、「カンボジア人民党」は多大なる権力の名の下に構成員を増やし続けてきました。「カンボジア人民党」の一員にならない場合は野党のメンバーだとみなされ、村から追い出されたり脅迫を受けたり、時には殺されたりという状況に追いやられてきました。

「カンボジア人民党」に従わざるをえないという感情を、長年の恐怖の支配体制の中で築き上げてきたような気がします。だから今でも、カンボジアの人々の中には「カンボジア人民党」に追従しなくてはならない、そうしなければあの時代のような恐怖が戻ってきてしまうという思いが、彼らの中にはあるような気がします。このような状況が続く限りは、国民の心に変革をもたらすのは難しいのではないかなと思います。立ち上がろうとする若者もいるのですが、事実、目の前で逮捕され、暗殺されるという状況を見せつけられているので、現時点で変革を求めるというのは非常に厳しい状況にあるのではないかなと思います。

:高橋さんが期待するカンボジアの未来について教えてください。

当たり前の権利や正義が守られる社会

高橋:私が取材し続けてきたのは、不当な人権弾圧を受け続けている人々の現場。彼らの涙や思いや願いを聞き続けてきたので、その人々の声が常に心の中にあります。だからこそ、彼らの望む当たり前の権利、当たり前の正義が守られる、そういう社会がカンボジアの未来に訪れたらいいなと思っていますし、その瞬間をいつの日か最前線で切り取りたいと願っています。

:だからこそ、「私たちは皆さんのことを見ていますよ」というメッセージを世界中から発信し続けていくことが大事かもしれませんね。最後に一言、メッセージをお願いします。

高橋:カンボジアの現状を広く伝えたいと思っています。日本で生活をしている中ではなかなかタッチできない現場かもしれませんが、遠い世界で起きている出来事とはとらえず、自分自身でそれが起きてしまったらどうなるかという形で置き換えていただき、今カンボジアで起きている問題を心の中で深く考えて想いを馳せていただけたらなと、常に思っています。

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GARDEN編集部

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