1口1万円、「小口不動産投資」で何が変わるか 新興企業トップにロングインタビュー
岩野:ソーシャルレンディングがある種のブームで、かつまだ業界全体的にそれほど大きな問題が生じていなかった頃は、「ロードスターは利回りが低すぎる」という声もありました。ところが参入業者が増え、行政処分を受ける会社も出てきたことで、少し雰囲気が変わってきたのかなと感じます。そうやって管理がずさんな会社が出てくると、投資家もリスクについてより注意するようになりますよね。ただ、今だと規制上、商品設計の内容がどうしてもブラックボックスにならざるをえません。投資家の立場としては、運営会社がしっかりしているかどうかでリスクを判断するしかない状態です。
われわれはもともと、上場する予定はなかったんですが、運営会社がしっかりしているということを客観的に理解してもらうためには、上場というプロセスを経て、公開企業として適正な監査を受けて情報を開示するしかないと思ったんです。それが、クラウドファンディング自体の発展にも寄与すると考えていました。
朝倉祐介(シニフィアン共同代表):上場の理由として「社会からの信用を得るため」というのはよく聞く話ではありますが、御社ほどそうした理由に納得感のある上場は珍しく感じますね。
村上:1~2年待っていれば、今御社が仕込まれているエクイティ型クラウドファンディングなど、いくつかのマイルストーンにミートするタイミングが来るのに、なぜあえて今の時点で上場したのかを伺おうと思っていたんですが、そういう理由だったんですね。
岩野:確かにロードショーを回っていて、機関投資家さんに「1年待てばちゃんとバリュエーションがつくのに、なんで待たないの?」という質問も受けましたね。でも、われわれからすればクラウドファンディングのマーケットを作ることが優先なんです。自分たちがエグジットしたいわけじゃありません。たとえバリュエーションが低くても上場して、不動産のクラウンドファンディングに対する世間の認知を高め、お客さんを開拓してマーケットを作りたかったんですよ。まあそう説明しても、投資家さんからは「じゃあうちじゃ、そんなに評価できないね」と返答されてしまうんですけどね(笑)
村上:短期的なバリュエーションではなく、長期的な視点に立ち、少しでも早く上場しようと考えられたわけですね。
岩野:まずはクラウドファンディングのマーケットを作ることが第一です。皆さんが思っている以上に、不動産のクラウドファンディングのマーケットは大きいとわれわれは考えているんです。日本の不動産業界は、REITだけでも10兆円を超えているマーケットなんです。そのうちの何%かがクラウドファンディングに回れば、数千億円のマーケットには成長するわけですよ。だから、そこの資金調達の仕組み作りさえできればものすごいチャンスがあると考えています。
岩野:しかも、個人の方もクラウドファンディングに興味を持ち始めていて、マーケットを作るタイミングとしてはバッチリ合っているわけです。だから、上場して信頼できる事業者として業界を切り拓いていくことがマーケットの発展にもつながるし、結果的に自分たちにも返ってくるんじゃないかと考えています。
不動産投資を個人にも開かれたフェアなマーケットに
村上:不動産業界のプロフェッショナルな方々と対面でやりとりするコーポレートファンディング事業と比べて、個人の方とオンラインでやりとりするクラウドファンディング事業はどのような特徴がありますか?