トランプはインド太平洋戦略を曲解している

日本が中国への対抗策を提案したのに・・・

そこで日本政府はトランプ大統領の訪日について協議を重ねる中で、トランプ政権にまだ明確なアジア政策がないことを指摘し、今回の訪問の機会を生かして、アジア政策を打ち出すべきだと提案した。

米側がこの提案を歓迎したのはいうまでもない。日本政府が具体的に示したのが、安倍首相がかねてから主張していた「インド太平洋戦略」だった。トランプ大統領歴訪前の10月中旬、ティラーソン国務長官が米国とインドの関係についてワシントンで講演したが、その際「インド太平洋」という言葉を何度も繰り返して使いその重要性を強調した。それが日本政府による提案を受けての米政府の最初の発信だった。

トランプ大統領は意味や意図を理解していない

問題はトランプ大統領が「インド太平洋戦略」の意味や意図をどこまで理解しているかだ。

ベトナムでの演説でトランプ大統領は「自由で開かれたインド太平洋というビジョンを共有することは誇らしい」とは語ったものの、あとはこれまで繰り返してきた自国中心主義や国際協調路線の否定に終始した。

「米国はこれまであまり条件を付けずに関税を下げ、貿易障壁もなくし市場を開いてきた。そして外国の商品が自由に入ってくることを許した。ところが、他国は自分たちの市場を開放しなかった」、「WTOはその理想をいつか実現すると思っていたが実現していない」と、これまでWTOを中心に進めてきた国際社会の通商ルール作りを否定した。さらに「どの国も自国を第一に考えるように、私はアメリカファーストが大事だ」、「インド太平洋地域の国々が公平で互恵的な貿易という原則を守るのであれば、二国間の貿易の合意をしたい」と、多国間協議を拒絶し、二国間での交渉、条約締結を優先する考えを強調した。

同じ日、日本政府は米国が離脱した後のTPPについて、残った11カ国を何とかまとめて米国抜きの枠組みについて「大筋合意」にこぎつけていた。トランプ大統領がそんな動きに何の関心も持っていないことは明らかだった。

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