トランプ大統領ごり押し「税制改革」の危うさ 独りよがりな議会戦略の末路
確かに前例はある。2000年代前半に当時のブッシュ政権下で実施された大型減税(ブッシュ減税)は、2010年末までの時限減税だった。財政調整法が使われたことが一因だが、これらの減税は予定どおりに終了したわけではなく、その多くが後年に恒久化されている。
ただし、恒久化への道のりは波乱含みだった。期限切れとなるタイミングでは、政権は民主党のオバマ政権に変わっており、特に富裕層向けの減税を延長するかどうかで、議論は紛糾。そのまま時間切れとなり、すべての減税が期限どおりに失効する可能性すら取りざたされた。そうなれば、実質的な大増税である。「財政の崖」ともいわれた非常事態の回避が、大きな論点となっていった。
結局、ブッシュ減税は、2010年末に2年間延長されたうえで、ようやく2013年に富裕層向け部分を除いて恒久化にこぎ着ける。その間の混乱こそが、独りよがりの減税がもたらした弊害である。
なりふり構っていられない共和党
今の議会共和党に、将来の混乱に思いを馳せる余裕はない。中間選挙に向けた危機感が、議会共和党を突き動かしている。何しろトランプ政権が誕生して以来、議会は目立った成果を上げられていない。このまま手ぶらで投票日を迎えれば、議会多数党の座は危うい。何らかの成果を上げるには、なりふり構ってはいられない。
1980年代に共和党のレーガン大統領は、財政調整法を使わずに、民主党の賛成を得ながら大型の税制改革を行った。議会の多数党が民主党だったという事情はあるにせよ、今回の税制改革とはまったく違う進め方である。
トランプ大統領のディール術をもってしても、民主党へのラブコールは、本格的な超党派の法案作りというよりも、共和党だけでは過半数すら確保できなかった場合の保険としての側面が強い。かつてないほどに党派対立が厳しくなった今の米国では、時限減税という時限爆弾を抱えた税制改革が精いっぱいなのかもしれない。
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