トランプ大統領ごり押し「税制改革」の危うさ 独りよがりな議会戦略の末路
これではトランプ政権が保険をかけたくなるのも無理はない。縁起でもない話だが、不測の事態で賛成票が欠ける可能性すら否定できない。高齢の議員が多いだけに、タッド・コックラン上院議員(ミシシッピ州)のように、体調不良で欠席が長引く議員が出るかもしれない。7月のオバマケア改廃に関する投票では、マケイン上院議員が悪性の脳腫瘍と診断され、投票への参加が危ぶまれた。
実際に民主党から税制改革に賛成する議員が出るかどうかは、来年11月に投開票を控えた議会中間選挙をにらんだ駆け引きとなる。上院では全議席の3分の1が改選されるが、来年の選挙で改選となる民主党議員には、昨年の大統領選挙でトランプ大統領が圧勝した州から選出されている議員がいる。
「独りよがりな戦略」の代償
こうした民主党の議員たちにとって、地元で人気の高いトランプ大統領に抵抗することは、再選への障害になりかねない。実際にトランプ大統領は、やはり大統領選挙で大勝したインディアナ州から再選を狙う民主党のジョー・ドネリー上院議員に対し、税制改革に反対した場合には、「全力で再選を阻止する」と通告している。
もっとも、トランプ大統領も万全ではない。11月7日に投開票が行われたバージニア州とニュージャージー州の州知事選挙では、「反トランプ」を掲げた民主党候補が勝っている。トランプ大統領の神通力が大統領選挙で大勝した州ですら薄れるようだと、民主党議員が税制改革に賛成する理由は見つけにくくなる。
たとえ共和党の賛成だけで成立させられたとしても、独りよがりの戦略は税制改革に傷あとを残しそうだ。党派を超えた賛成を得られないがゆえに、2つの点で将来の変更に脆弱になるからだ。
1つは、政治的な脆弱性である。民主党が一丸として反対する以上、政権が共和党から民主党に交代した場合には、税制改革の巻き戻しが論点となる可能性がある。民主党のオバマ政権が実現したオバマケアが、共和党のトランプ政権下で改廃の標的となっているのが好例だ。
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