トランプ大統領ごり押し「税制改革」の危うさ 独りよがりな議会戦略の末路
米議会の共和党が、ドナルド・トランプ政権が公約とする税制改革の実現に突き進んでいる。背景には「来年の議会中間選挙までに成果を上げなければいけない」という危機感があるが、共和党だけで審議を進めようとするやり方にはリスクがある。
11月7日、アジア歴訪の一環として韓国のソウルを訪れていたトランプ大統領は、早朝に1本の国際電話をかけた。その相手は、経済担当のゲイリー・コーン大統領補佐官。税制改革の実現に向け、議会上院の民主党議員と会合を開いていた現場に、サプライズで電話を入れたのだ。電話口でトランプ大統領は、その場に集まっていた民主党の上院議員に対し、税制改革の重要性を熱心に説明したという。
ラブコールの理由
トランプ大統領による民主党議員への海を越えたラブコールは、税制改革の実現に向けた、政権なりの「保険」である。トランプ政権から法案の成立を託された議会共和党は、民主党の協力を求めることなく、自らの党の賛成者だけで税制改革を実現すべく審議を急いでいる。
しかし、こうした独りよがりの議会戦略にはリスクがある。共和党は上下両院で多数党の座にあるとはいえ、それほど民主党との議席の差は大きくない。特に定数100人の上院では、共和党の現有議席は52議席にとどまる。
賛否が同数となった場合には、マイク・ペンス副大統領が投票に参加できるとはいえ、3人の共和党議員が造反すれば、少なくとも1人の民主党議員が賛成票を投じなければ、税制改革は実現できない。やはり1票足りずに否決された、7月のオバマケア改廃法案の二の舞だ。
ただでさえ共和党には、反旗を翻しそうな議員がいる。ボブ・コーカー上院議員(テネシー州)や、ジョン・マケイン上院議員(アリゾナ州)などは、税制改革による財政赤字の拡大を問題視している。スーザン・コリンズ上院議員(メーン州)のように中間層向けの減税を大きくするよう求めている議員や、トム・コットン上院議員(アーカンソー州)のようにオバマケアの改廃を同時に進めようとする議員もいる。
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