プラズマ戦線異状あり 王者・松下電器の変調
路線転換したパイオニア 液晶側は強気の勝利宣言
今年春、全国の家電量販店の店頭から、パイオニアのプラズマテレビが次々に姿を消した。「今後は高級価格帯のみで商売をしていくので、商品展示は(高級イメージが消費者に訴求できる)専用コーナーの設置が可能な店舗だけに限定させてほしい」--。パイオニアから申し出を受け、量販店側が条件を満たせない小型店での展示を取りやめたのだ。
量販店への販促費も削ったことから、競合機種との価格差は5割前後に広がり、台数は一気に落ち込んだ。それでも同社幹部は「プレミアムブランドとしての位置づけを明確にし、他社との差別化を図る。販売台数は限られるが、1台ごとの付加価値を高めたい」と強調する。
同社はプラズマ専業として最も規模が小さい。近年は松下などの強大なライバルの攻勢を受けて、販売台数を落としてきた。さらに、液晶テレビメーカーが大型サイズに攻め込み、情勢は厳しさを増した。もはや数を追っても太刀打ちできない。高級化路線は同社の事業存続をかけた窮余の策でもある。
パイオニアがシェア争いから離脱する中、最大手の松下はあくまで液晶陣営と徹底的に戦う構えだ。それも当然だろう。すでにプラズマの生産設備に累計で約4000億円もの資金を投下。しかも、今年の年初には、2800億円を投じる世界最大規模の新工場建設計画を発表した。
同社の大坪文雄社長は「松下の再成長」を掲げ、プラズマ事業をその牽引役に位置づけている。液晶陣営に押されてプラズマ事業の成長が完全に止まれば、巨額投資の回収に手間取るだけでなく、「再成長」という公約達成が難しくなる。
「プラズマとの勝負? そんなもんはとっくに終わっとる。数字を見れば一目瞭然や」と、攻める液晶陣営シャープの首脳からは、強気の勝利宣言が飛び出す。一方の松下も6月末に海外で液晶と同じ高精細のプラズマを投入し、反撃体制を整えた。大坪社長曰く「7月は北米でうちのプラズマが前年の倍近い売れ行きをみせている。何の心配もしてませんよ」。今や松下はプラズマ陣営における最後の砦だ。その松下が沈むようならば、もはやプラズマ産業に未来はない。
(書き手:渡辺清治、中島順一郎 撮影:尾形文繁)
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