プラズマ戦線異状あり 王者・松下電器の変調

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プラズマ戦線異状あり 王者・松下電器の変調

それは単なる踊り場か。プラズマの王者・松下の第1四半期決算で、販売額が初めて前年割れとなった。薄型テレビ市場をめぐる液晶陣営との覇権争いは決着が近いのか。(『週刊東洋経済』8月11・18日合併特大号より)

 「さすがの松下でさえ……」--。7月下旬、家電業界は松下電器産業のプラズマテレビの話題で持ちきりだった。25日、同社が発表した2007年度の第1四半期(4~6月)決算は過去最高益を更新し、全体では至って好調。

 だが、個別では見逃せない数字があった。薄型テレビの大黒柱、プラズマの販売金額が前年対比で1%減少。わずかではあるが、初めて前年実績を割り込んだのだ。

 薄型テレビ市場は家電業界を代表する成長分野だ。北米や欧州でも爆発的な普及期に入り、世界の市場規模は今年も2ケタ成長が確実視される。市場拡大を追い風に、シャープの4~6月期の液晶テレビ販売金額は前年比45%増、同じく液晶テレビを柱とするソニーも2割増だった。

 松下の販売台数の伸びは1割程度で、価格の下落分をカバーできなかった。主戦場の北米と日本での販売金額が前年を割り込んだ。海外の新機種投入が6月後半だったことを考慮しても、シャープやソニーの実績とはあまりに対照的である。

 プラズマ業界における松下の強さは圧倒的。昨年の世界シェアは約3割に達し、2位・韓国LG電子に倍近い差をつけている。今年に入ってから寡占化は一段と進み、業界では向かうところ敵なし。

 そうしたプラズマ業界の王者に「変調」が現れた最大の理由は、液晶テレビに潜在需要を食われているからだ。

 もともと、プラズマは大画面サイズを専門としてきた。ただ、液晶も技術の進歩で大型化や低価格化を実現し、プラズマの得意サイズへ本格的に攻め込んできた。しかも、液晶陣営はソニーやサムスン電子、シャープなどメーカー数が圧倒的に多いうえ、プラズマよりもフルハイビジョン(=高精細)化で先行した。

 この1年では液晶テレビメーカーが大型サイズで急激に販売台数を伸ばし、北米や日本では40インチ台のサイズでプラズマの出荷台数を追い越した。これを受けたプラズマの成長率鈍化は顕著で、専門調査会社ディスプレイサーチの予測によると、今年のプラズマの世界市場規模は金額ベースで初めて、1割近いマイナス成長に転じる見通しだ。

 松下でこそ1%の減少で済んだものの、他のプラズマメーカーはさらに厳しい。国内2位の日立製作所では、4~6月の販売苦戦を受けて、上期の出荷台数計画を引き下げた。下位のパイオニアは、壮絶なシェア競争から一線を画し、独自の生き残り策をとり始めている。

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