「貯金できない人」が気づかない残念な習慣 「時間割引率」という言葉を知っていますか?

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では貯金が得意というタイプの人はいったいどんな人なのでしょうか? 実はそんな人は世の中にはほとんどいません。「貯金が好き」という人はたくさんいますが、それが「得意」という人はほとんど存在しないのです。

前述のように、世の中の多くの人は「時間割引率の高い」タイプの人です。中にはそうでない人もいますが、生活や仕事全般にわたって何でもかんでも嫌なことから先にやれるという人はごく少数でしょう。したがって、何もせずに放っておくと人間というのは貯金ができない体質になっているのです。だからこそ世の中には「退職金」や「企業年金」という制度が存在しているのです。退職金等は長年働いたご褒美なのではなく、単に「給料の後払い」です。本来なら給料に上乗せして支払ってもかまいませんし、現実にそういう会社もあります。

貯金できない人は、どうすればいいのか?

ところが、もしほとんどの会社でそうやって退職金を前払いにしてしまうと、多くの人が老後の蓄えを自分で計画的にすることができなくなってしまいますから、結果として今よりももっと多くの人が悲惨な老後をおくることになりかねません。つまり貯金とか資産形成というのは、人間の本来の欲望や行動とは相反することをやらないとできないから難しいのです。

だとすれば、いったいどうすればいいのでしょう。答えはごく簡単です。仕組み化すればいいのです。おカネを貰ってしまって、そこから貯金するのが難しいということであれば、おカネを貰う前にあらかじめ一定の金額を別にしておくように仕組み化するのです。

つまり会社が本来払うべき給料を「退職金」や「企業年金」として積み立てているのと同じことを個人でもやればいいのです。その1つの答えが「給与天引き」です。

答えを「給与天引き」と言ってしまうと、あまりにも単純すぎて「何だ、それは!」と思うかもしれませんが、真実は極めてシンプルな中に秘められているものです。

私自身も時間割引率が高い人、すなわち貯金するのが難しい体質でしたから給与天引き以外で貯蓄できたためしはありません。逆に天引きされた分だけが残ったというのが事実です。よほど意志の強い、「時間割引率の低い人」以外は、天引きを活用するのが何といってもベストな方法ではないでしょうか。

大江 英樹 経済コラムニスト、オフィス・リベルタス代表

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おおえ ひでき / Hideki Oe

大手証券会社で25年間にわたって個人の資産運用業務に従事。確定拠出年金ビジネスに携わってきた業界の草分け的存在。日本での導入第1号であるすかいらーくや、トヨタ自動車などの導入にあたりコンサルティングを担当。2003年から大手証券グループの確定拠出年金部長などを務める。独立後は「サラリーマンが退職後、幸せな生活を送れるよう支援する」という信念のもと、経済やおカネの知識を伝える活動を行う。CFP、日本証券アナリスト協会検定会員。主な著書に『自分で年金をつくる最高の方法』(日本地域社会研究所)、『知らないと損する 経済とおかねの超基本1年生』(東洋経済新報社)などがある。

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