忙しすぎる日本人が知らない深く考え抜く力 たくさんの解き方を意識して重ねよう

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同じように1度考えれば、次に思考を働かすとき「考えやすく」なっているだろう。こうして思考を意識的に繰り返すことで、頭の中の「思考の道」が踏み固められ、考え抜く回路が作られていくのである。

「論よりラン」という人類の危機的誤解

工学が専門の私は、若い頃はすこぶる素直に「便利なものを作っていればいい」という「工学の宗教」を信じていて、もともとは究極の便利ともいうべき「人工知能:AI」リサーチを主とする研究者だった。

しかし、AIに「考えさせる」ことはなかなか実現できず、「思考は、人間にしかできない営み」なのだと痛感させられた。

人間に備わった「考える」という強みを活かしてこそ、これから迎える「AI時代」を生き抜く原動力になっていくのだろうが、世の中に「便利」が増えるにつれ、「思考」という自分を自分たらしめているものが簡単に省略される時代を生きていることを感じてしまう。

『京大式DEEP THINKING』(サンマーク出版)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

「考える前に行動」というのはよく聞かれるビジネスフレーズだが、「論よりラン」といった語呂合わせの標語はなぜか「なるほど」と思ってしまうから危うい。画一的に「考える前に行動」は私が専門としているデザイン学的にみても非常に安直とされるのだ。

デザイン学の分野でも「製品開発ではまず試作することが重要」と盛んに言われてはいるが、これはデザイン対象に関する事項を詳細に知る「深いインプット」をないがしろにせよという意味ではなく、試作の前にはそこにむしろ時間をかけるべきとの声も大きい。

思考のプロセスを意識的に重ねることなく、頭に言葉を浮かべて「わかったつもり」で終わったり、何も考えずアクションを起こしたりするのではなく、「思考」を途中に挟んで自分らしさを強みとして加えてこそ、既存を超える「想定以上の成果」を生むことになるのだ。

川上 浩司 京都大学デザイン学ユニット特定教授、博士(工学)

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かわかみ ひろし / Hiroshi Kawakami

専門はシステムデザイン。1964年島根県出身。京都大学工学部在学中に人工知能(AI)など「知識情報処理」について研究し、同修士課程修了後、岡山大学で助手を務めながら博士号を取得。その後、京都大学へ戻った際、恩師からの「これからは不便益の時代」の一言がきっかけで「不便がもたらす益=不便益」について本格的に研究を開始する。不便益研究の一環として作成した「素数ものさし」(目盛りに素数のみが印字されたものさし)は、その特異性から話題を呼び、京都大学内のみでの発売にもかかわらず、3万本以上の販売を記録している。著書に、『不便から生まれるデザイン』(化学同人)、『ごめんなさい、もしあなたがちょっとでも行き詰まりを感じているなら、不便をとり入れてみてはどうですか?~不便益という発想』(インプレス)などがある。

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