忙しすぎる日本人が知らない深く考え抜く力 たくさんの解き方を意識して重ねよう
同じように1度考えれば、次に思考を働かすとき「考えやすく」なっているだろう。こうして思考を意識的に繰り返すことで、頭の中の「思考の道」が踏み固められ、考え抜く回路が作られていくのである。
「論よりラン」という人類の危機的誤解
工学が専門の私は、若い頃はすこぶる素直に「便利なものを作っていればいい」という「工学の宗教」を信じていて、もともとは究極の便利ともいうべき「人工知能:AI」リサーチを主とする研究者だった。
しかし、AIに「考えさせる」ことはなかなか実現できず、「思考は、人間にしかできない営み」なのだと痛感させられた。
人間に備わった「考える」という強みを活かしてこそ、これから迎える「AI時代」を生き抜く原動力になっていくのだろうが、世の中に「便利」が増えるにつれ、「思考」という自分を自分たらしめているものが簡単に省略される時代を生きていることを感じてしまう。
「考える前に行動」というのはよく聞かれるビジネスフレーズだが、「論よりラン」といった語呂合わせの標語はなぜか「なるほど」と思ってしまうから危うい。画一的に「考える前に行動」は私が専門としているデザイン学的にみても非常に安直とされるのだ。
デザイン学の分野でも「製品開発ではまず試作することが重要」と盛んに言われてはいるが、これはデザイン対象に関する事項を詳細に知る「深いインプット」をないがしろにせよという意味ではなく、試作の前にはそこにむしろ時間をかけるべきとの声も大きい。
思考のプロセスを意識的に重ねることなく、頭に言葉を浮かべて「わかったつもり」で終わったり、何も考えずアクションを起こしたりするのではなく、「思考」を途中に挟んで自分らしさを強みとして加えてこそ、既存を超える「想定以上の成果」を生むことになるのだ。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら