党大会「居眠り江沢民」から読む中国の近未来 元中国大使が断言「習近平の3期目はない」

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一方、反腐敗運動は「トラもハエも同時にたたく」のスローガンで進めてきた党内の汚職摘発活動である。こちらも党大会で、習体制の過去5年間の成果が誇らしげに語られたが、まだ道半ばである。手を緩めるわけにはいかない。

反腐敗運動とは、すなわち粛清であり、権力闘争である。粛清される側は己に非があろうとなかろうと、すきあらば逆襲に出んと身構えている。もし、習近平が粛清の手を緩めれば、たちまち反撃を食らうことになる。粛清は相手が抵抗する気力も体力もなくなるまで、徹底してやらなければこちらがやられてしまう、そういうものだ。中国の政府幹部たちは、こうした権力闘争の力学を痛いほどわかっている。したがって、習近平が反腐敗運動の手を緩めることはありえない。

反腐敗運動を抜かりなく継続したい習近平にとって、苦楽を共にした長年の「戦友」であり、頼りになる「事実上のナンバー2」の王岐山は手放したくなかった人材のはずだ。事は1つ間違えれば、わが身の政治生命はおろか身体の安全にもかかわる重大問題であるからだ。

しかし、ここでも習近平は68歳で引退という党の慣例を守った。慣例は守ったものの、新任の趙楽際では、まだいかにも心もとない。王岐山は指導部からは退き表には出てこないかもしれないが、何らかの形で習近平を支えるポジションに就くものと私は見ている。企業でいえば王岐山は、取締役は退任するが、社外取締役の監査委員会委員長のような形で側面から習近平を支えるのではないかということだ。

習近平の夢は止まらない

すべての権力を握ったかに見える習近平体制だが、来年3月に開かれる全国人民代表大会(全人代)までは慎重運転を続けるだろう。第2期習近平体制が本格スタートするのは、来年の春以降ということになる。

私は中国大使のときに、習近平とは何回も会っている。彼が必ず言ったのは「日本と中国は住所変更ができません」、もう1つが「2049年、中華人民共和国の建国100周年に『中華民族の夢』を実現したい」である。

習近平は、5年前、2012年秋の主席就任演説で「中華民族の夢」を語った。今回も、中華民族の偉大な復興に継続して奮闘すると宣言している。

では「中華民族の夢」とは何か。中国は19世紀から20世紀の前半にかけて、諸外国にいろいろなものを奪われた。1840年からの阿片戦争で敗北し、清国はイギリスに香港を奪われた。後を追うようにロシア、日本、ドイツ、フランス、アメリカ、これらの国々が中国に進出し、中国人の主権を侵害してきた。1915年には、当時の袁世凱政権が日本の「21カ条の要求」をのまされた。

「中華民族の夢」とは、これら過去に奪われたものを取り戻すことである。自分の国なのに主権がないという屈辱を受けた中華民族の誇りと大国の地位を取り戻す試みが「中華民族の夢」である。

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